霞が関の視点から「シン・ゴジラ」を見る:危機管理とポピュリズム

原英史
 

「シン・ゴジラ」は、政府における危機管理を描いた映画として、とてもよくできている。筆者は、かつて通商産業省から内閣官房の危機管理担当の部局に出向したことがある。映画にも出てくる「内閣危機管理監」の下、当時、東海村JCO臨界事故(1999年)や、西暦2000年の正月(コンピュータ誤作動による問題発生のおそれがあったことから警戒態勢をとっていた)など、オペレーションルームでの対応にあたった経験があるが、それに照らしても違和感はほとんどない。それぐらい、よく関係者に取材して作られていると思う。
 よく取材され過ぎたが故か、この分野の専門用語が当たり前のように使われている。例えば、冒頭で出てくる「緊急参集チーム」や「官邸連絡室を官邸対策室に改組」など、馴染みのない人にはなかなか理解できないのでないかと心配になるぐらいだ。これから映画をみられる方は、あらかじめ以下のページにざっとでも目を通されておくとよいかもしれない。【内閣官房ホームページの「内閣官房副長官補」の項】

「問題提起」と「解決策」

 エンターテインメントとしての面白さは脇において、ここでは敢えて、この映画を「政府の危機管理」に関するレポートと読み替えてみたい。レポートの構成に直してみると、要するにこんなことだと思う。
 
1、問題提起: 日本政府の危機管理では、以下のような要素が混乱・阻害要因になりがちだ。
(1)形骸化した会議や、無用な形式にとらわれた意思決定メカニズム
(2)危機感や判断・決断能力の欠けた政治家
(3)パニック回避に偏りがちな国民向け情報提供
(4)縦割りで硬直的な官僚機構
(5)緊急時の対処に貢献できない御用学者
(6)自衛隊の活動に関する強固な制約
(7)過剰な対米配慮

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執筆者プロフィール
原英史
原英史 1966年東京都生れ。東京大学法学部卒、米シカゴ大学院修了。89年通商産業省(現・経済産業省)入省。大臣官房企画官、中小企業庁制度審議室長などを経て、2007年から安倍・福田内閣で行政改革・規制改革担当大臣の補佐官を務める。09年7月退職。株式会社政策工房を設立し、政策コンサルティング業を営む。大阪府・市特別顧問、国家戦略特区ワーキンググループ委員(内閣府)、社会保障審議会年金事業管理部会委員(厚生労働省)を務めるほか、NPO法人万年野党理事、「地方議会を変える国民会議」発起人など。著書に『官僚のレトリック』(2010年、新潮社)、『「規制」を変えれば電気も足りる』(2011年、小学館101新書)、『日本人を縛りつける役人の掟/岩盤規制を打ち破れ』(2014年、小学館)、『国家と官僚』(2015年、祥伝社新書)。
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