北朝鮮・核搭載ミサイルの衝撃(中)疑惑の中国企業はスケープゴート?

平井久志
執筆者:平井久志 2016年9月23日

 北朝鮮は9月9日の午前9時という数字遊びでもしているかのようなタイミングで5回目の核実験をした。9月9日は北朝鮮の建国記念日だ。この日に核実験をして国威発揚を考えたとみられるが、その後の北朝鮮の反応は奇妙だった。

今回、北朝鮮は大騒ぎせず

 党機関紙「労働新聞」の翌9月10日付1面トップは建国記念日に当たり人民軍の将兵や各界の幹部、青少年が金日成(キム・イルソン)主席と金正日(キム・ジョンイル)総書記の銅像を訪問して花束を捧げたという記事だった。核実験の成功を告げる「核兵器研究所」の声明は1面下段に掲載され、3面下段に外国メディアが核実験を報じたことや、核実験成功の報道に接した北朝鮮住民の反応などが報じられたが、極めて控え目な報道だ。
 今年1月に4回目の核実験をした時は、「労働新聞」1月7日付1面には核実験の命令書にサインする金正恩(キム・ジョンウン)第1書記と2枚の命令書の写真などが全面に掲載された。金正恩氏が核実験を命令したことが大きく取り上げられ、金正恩氏の指導力が強調されたわけだ。
 しかし「核兵器研究所」の声明には、核実験が「朝鮮労働党の戦略的核戦力建設構想にもとづき」行われたことや、朝鮮労働党中央委が核実験場の核科学者や技術者に「熱烈な祝賀」を送ったことは強調されたが、声明の中に「金正恩党委員長」の名前がなかった。
 金正恩党委員長の唯一的領導体系が強調される中での核実験だが、金正恩党委員長の指導力を称える論調はあまりなかった。
 9月13日に平壌で核弾頭爆発実験の成功を祝う軍民交歓大会が開かれ、その後、各地で同様の大会が開かれたが、全体としては抑制的だった。
 金正恩党委員長が5回目の核実験に言及したのは実験後、10日以上が経ってからだった。「労働新聞」は9月22日付で、金正恩党委員長が核弾頭爆発試験の成功に寄与したメンバーたちと記念写真を撮ったと報じた。金正恩党委員長は「参加者らが核兵器化事業に一層拍車を掛け、国の自主権と民族の生存権を守護するための国家核武力を質・量的に強化することにより、核保有強国としてのわが国の戦略的地位を強固にする上で新たな成果を収めると期待し確信する」と述べた。
 こうした北朝鮮の姿勢は不気味でもあった。北朝鮮が今回の核実験になぜこのように抑制的な姿勢を取っているか不明だが、北朝鮮は既に核開発を日常化しており、弾道ミサイルに搭載できる核弾頭の爆発実験などは、当然の結果とでもいうような姿勢にもみえた。

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執筆者プロフィール
平井久志
平井久志 ジャーナリスト。1952年香川県生れ。75年早稲田大学法学部卒業、共同通信社に入社。外信部、ソウル支局長、北京特派員、編集委員兼論説委員などを経て2012年3月に定年退社。現在、共同通信客員論説委員。2002年、瀋陽事件報道で新聞協会賞受賞。同年、瀋陽事件や北朝鮮経済改革などの朝鮮問題報道でボーン・上田賞受賞。 著書に『ソウル打令―反日と嫌韓の谷間で―』『日韓子育て戦争―「虹」と「星」が架ける橋―』(共に徳間書店)、『コリア打令―あまりにダイナミックな韓国人の現住所―』(ビジネス社)、『なぜ北朝鮮は孤立するのか 金正日 破局へ向かう「先軍体制」』(新潮選書)『北朝鮮の指導体制と後継 金正日から金正恩へ』(岩波現代文庫)など。
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