「天から降ってきたドゥテルテ」が中国から「ぶんどったもの」

野嶋剛
外交的にはなかなかの策士か(C)AFP=時事

 

 フィリピンのドゥテルテ大統領による衝撃的な訪中で浮かび上がったのは、世界の大国でありお金持ちの中国から、徹底的にぶんどれるだけぶんどろうという小国のリアリズムだった。ドゥテルテは、現在というタイミングが、中国からできるだけ多くの利益を引き出す千載一遇のチャンスだと見て、一気に行動に出た形である。ドゥテルテが進める麻薬犯罪対策による治安回復の次は、景気の引き上げと地方の活性化だ。今回の訪中を契機に、ドゥテルテが世界を驚かせた米国への「決別宣言」の代わりに引き出したチャイナマネーが、フィリピンに一気に流れ込むだろう。

 

当面の解決を見た「南沙諸島問題」

 習近平・国家主席から「争いは棚上げできる」との言質を引き出したことで、ドゥテルテの訪中外交は勝利だったと言えるだろう。中国外交部は、南沙諸島のファイアリークロス礁付近でのフィリピン漁民の操業については「適切にアレンジする」と述べ、漁民の入漁を認める姿勢も示している。

 この会談で、オランダ・ハーグの仲裁裁判所による判決は、事実上、無効化された。少なくとも提訴の当事者であるフィリピンが判決にこだわらない姿勢を示したのである。その判決の客観的な正当性は残るかも知れないが、もともとの紛争解決という意味では当面の解決を見てしまった形だ。

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執筆者プロフィール
野嶋剛 1968年生れ。ジャーナリスト。上智大学新聞学科卒。大学在学中に香港中文大学に留学。92年朝日新聞社入社後、佐賀支局、中国・アモイ大学留学、西部社会部を経て、シンガポール支局長や台北支局長として中国や台湾、アジア関連の報道に携わる。2016年4月からフリーに。著書に「イラク戦争従軍記」(朝日新聞社)、「ふたつの故宮博物院」(新潮選書)、「謎の名画・清明上河図」(勉誠出版)、「銀輪の巨人ジャイアント」(東洋経済新報社)、「ラスト・バタリオン 蒋介石と日本軍人たち」(講談社)、「認識・TAIWAN・電影 映画で知る台湾」(明石書店)、訳書に「チャイニーズ・ライフ」(明石書店)。
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