習近平「真の戦場」は軍の「大手術」

宮本雄二
執筆者:宮本雄二 2017年1月2日
エリア: 中国・台湾
昨年12月2日、キッシンジャー元米国務長官(左)と会談した習近平氏。対米関係はもちろん重要な課題の1つだが……(C)AFP=時事

 世界は、すでに十分すぎるほどの問題を抱え込んでいる。歴史的な大きな転換期にあると言って良い。習近平率いる中国共産党は、その中で2017年、5年に1度の党大会を迎える。党大会は、中国共産党にとり、これから5年間の方針と体制を決める最重要行事であり、いつでも緊張した波乱含みのものとなる。しかもトランプ大統領の登場で、2017年の世界はさらに不確実なものとなった。そういう国際環境の中での第19回党大会となるのだ。

中国を取り巻く国際環境の変化

 中国は、世界情勢を「世界の平和は続き(大国間の戦争はない)、経済のグローバル化と経済の相互依存はさらに深まる」と見ている。同時に「世界は、米国一極から多極化への歩みを速めており、そのプロセスは不安定で、リスクはあるが同時にチャンスでもある」と認識している。「世界大国となった中国は、新しい時代の秩序の形成やルール作りに、積極的に関与することにより、自国の利益を確保しなければならない」とも考えている。
 中国は、現時点において既存の国際秩序を変えるつもりはない。既存の国際秩序から最大の利益を得ている国が、中国だからだ。たとえ秩序を変える野望を抱いたとしても、予見される将来、中国にそれを構想し、実現する力はない。これが客観的な事実だ。それができるのではないかと舞い上がった者も中国の一部にいたが、結局は既存の国際秩序の存続を前提として、その修正や補完をするのが得策という結論に落ち着いている。「一帯一路」構想やアジアインフラ投資銀行(AIIB)は、一部で言われたような既存の国際経済秩序への挑戦ではなく、実体は、あくまでも既存の秩序の補完であり、改善を目指すものだ。
 しかし欧米を席巻する反グローバリズムは、保護主義と自国第一という考え方を強めている。既存の国際秩序の弱体化への動きでもある。中国が既存の国際秩序を支えようと思ったときに、欧米でその逆のことが起こるのは歴史の皮肉だが、この反グローバリズムは、中国にとっても困ったことなのだ。

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執筆者プロフィール
宮本雄二 みやもと・ゆうじ 宮本アジア研究所代表、元駐中国特命全権大使。1946年福岡県生まれ。69年京都大学法学部卒業後、外務省入省。78年国際連合日本政府代表部一等書記官、81年在中華人民共和国日本国大使館一等書記官、83年欧亜局ソヴィエト連邦課首席事務官、85年国際連合局軍縮課長、87年大臣官房外務大臣秘書官。89 年情報調査局企画課長、90年アジア局中国課長、91年英国国際戦略問題研究所(IISS)研究員、92年外務省研修所副所長、94年在アトランタ日本国総領事館総領事。97年在中華人民共和国日本国大使館特命全権公使、2001年軍備管理・科学審議官(大使)、02年在ミャンマー連邦日本国大使館特命全権大使、04年特命全権大使(沖縄担当)、2006年在中華人民共和国日本国大使館特命全権大使。2010年退官。現在、宮本アジア研究所代表、日中友好会館副会長、日本日中関係学会会長。著書に『これから、中国とどう付き合うか』(日本経済新聞出版社)、『激変ミャンマーを読み解く』(東京書籍)、『習近平の中国』(新潮新書)。
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