混迷のフランス政界地図(上)大統領予備選でもまとまれない「左派」の苦衷

渡邊啓貴
執筆者:渡邊啓貴 2017年2月1日
カテゴリ: 国際 政治
エリア: ヨーロッパ
ヴァルス前首相(左)優位の予想を覆し、左派の大統領候補に選出されたアモン前教育相 (c)AFP=時事

 1月29日、フランスでは社会党・左派大統領候補選出のための予備選挙第2回投票が行われた。勝利したのはオランド大統領の懐刀であったマニュエル・ヴァルス前首相ではなく、49歳のブノワ・アモン前教育相だった。当初最有力候補だったヴァルス氏は敗退した。

安定した支持集める国民戦線

 この4・5月に行われるフランスの大統領選挙が混沌としてきた。候補者の顔ぶれはほぼ出そろったが、今後どのような攻防が展開されるのか、一寸先は闇の状態がまだしばらく続きそうだ。
 改めて言うまでもなく、その第1の要因は、マリーヌ・ルペン氏率いるヨーロッパ最大の極右政党「国民戦線(FN)」が単独では第1政党で、一連の世論調査でも25パーセント以上の支持を得て安定していることだ。フランスの大統領選挙は2回投票制なので、今の情勢ではFNのルペン氏は確実に決選投票に残ることになる。
 共闘する政党がいないので、ルペン氏が第2回投票で大統領になる可能性は限りなく少ないといえそうだが、第2回投票に残る候補者をどのように立てていくのかが、左派の最大の課題となっている。そのためにどのような合従連衡の可能性があるのか。暗中模索の攻防は熾烈さを増している。
 実は今回の社会党・左派の予備選挙には、左派の有力者がすべて立候補したわけではない。社会党の急進左派と共産党、中道寄りの左派の候補者が加わっていない。この予備選挙の候補者にどのくらいの意味があるのか。左右ともに既成政党の混迷ぶりは甚だしい。今やフランス政界は風雲急を告げる様相を呈している。まだ先の話になるが、ルペン氏が一石を投じた政界の嵐によって大統領選挙後の政界再編成は不可避だ。

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執筆者プロフィール
渡邊啓貴 東京外国語大学大学院総合国際学研究院教授。1954年生れ。パリ第一大学大学院博士課程修了、パリ高等研究大学院・リヨン高等師範大学校客員教授、シグール研究センター(ジョージ・ワシントン大学)客員研究員、在仏日本大使館広報文化担当公使(2008-10)を経て現在に至る。著書に『ミッテラン時代のフランス』(芦書房)、『フランス現代史』(中公新書)、『ポスト帝国』(駿河台出版社)、『米欧同盟の協調と対立』『ヨーロッパ国際関係史』(ともに有斐閣)『シャルル・ドゴ-ル』(慶應義塾大学出版会)『フランス文化外交戦略に学ぶ』(大修館書店)『現代フランス 「栄光の時代」の終焉 欧州への活路』(岩波書店)など。
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