マレーシアから見た「金正男暗殺事件」

野嶋剛
クアラルンプールの北朝鮮大使館前にはマレーシアの民衆が抗議に集まった(C)AFP=時事

 

 北朝鮮の指導者、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の異母兄、金正男(キム・ジョンナム)氏とみられる男性が殺害された事件で、現場となったマレーシアと殺害への関与を認めない北朝鮮の関係が緊迫化している。このままでいけば、国際的に孤立する北朝鮮が、東南アジアで歴史的に確保してきた友好国・マレーシアという貴重な足場を事実上失うことは間違いなさそうだ。

 

国交断絶も?

 DNA鑑定で身元を特定できていない状態で遺体の引き渡しを認めないマレーシアに対して、北朝鮮は「我々の敵対勢力(韓国)と結託している」などと述べて強く批判している。いわば陰謀論で、マレーシアが事件の背後にいることをほのめかした形だ。しかし、常識的に考えれば、その国の司法権の及ぶ場所で殺人事件が起きたのであれば、外国の著名人でも起訴されるまで法的手続きを完成させなくてはならないことは言うまでもない。

 マレーシアのアマン外務大臣は「マレーシア政府は、我が国の名誉をおとしめるでたらめな批判には非常に厳しく対応する」と述べ、ナジブ首相も「我々は北朝鮮にあえて汚名をかぶせる必要はない。だが、我々は公正さを守りたい」とたまらずコメントした。

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執筆者プロフィール
野嶋剛 1968年生れ。ジャーナリスト。上智大学新聞学科卒。大学在学中に香港中文大学に留学。92年朝日新聞社入社後、佐賀支局、中国・アモイ大学留学、西部社会部を経て、シンガポール支局長や台北支局長として中国や台湾、アジア関連の報道に携わる。2016年4月からフリーに。著書に「イラク戦争従軍記」(朝日新聞社)、「ふたつの故宮博物院」(新潮選書)、「謎の名画・清明上河図」(勉誠出版)、「銀輪の巨人ジャイアント」(東洋経済新報社)、「ラスト・バタリオン 蒋介石と日本軍人たち」(講談社)、「認識・TAIWAN・電影 映画で知る台湾」(明石書店)、訳書に「チャイニーズ・ライフ」(明石書店)。
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