「金正男暗殺事件」報道で注目:「華人メディア」の現在と「中国政府」の影

樋泉克夫
『中国報』電子版のトップ画面

 

 謎が謎を呼ぶ金正男暗殺事件だが、発生から16日余りが過ぎた3月1日、クアラルンプールで実行犯とされる2人の女性が起訴された。真相解明の場は内外メディアからマレーシアの裁判所に移ったことになる。これで北朝鮮、中国、マカオ、マレーシア、ヴェトナム、インドネシアに跨った“国際テロ事件”の全容解明に向けて一歩踏み出されたかと思いきや、事件関与容疑でマレーシア警察当局に逮捕されていた北朝鮮籍のリ・ジョンチョル容疑者(46歳)が「証拠不十分で釈放、および国外退去」と伝えられるに及んで、いよいよ謎は深まるばかりだ。

 この釈放を最初に「可能性大」と報じたのはマレーシアの華字紙『中国報(電子版)』とのことだが、金正男暗殺事件を伝える一連の報道に関して不思議に思うのは、事件解明の行方を左右するような“特ダネ”には、必ずと言っていいほど「現地華人メディアの報道によれば」といった類の一言が加えられていることだ。過去に東南アジアで発生した国際的な大事件に関連した報道では、こんなことはなかったように記憶する。

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執筆者プロフィール
樋泉克夫 愛知大学教授。1947年生れ。香港中文大学新亜研究所、中央大学大学院博士課程を経て、外務省専門調査員として在タイ日本大使館勤務(83―85年、88―92年)。98年から愛知県立大学教授を務め、2011年より現職。『「死体」が語る中国文化』(新潮選書)のほか、華僑・華人論、京劇史に関する著書・論文多数。
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