元同僚の仕事はやはり気になる。5月に刊行され、手元にはあったのだがなかなか読む時間がなく、お盆の時期に目を通すことができた。
林望著『習近平の中国――百年の夢と現実』(岩波新書)は、タイトルの通り、習近平体制になってからの中国を朝日新聞中国総局の特派員として見つめ続けた著者が、特派員の任期を終えて米国での留学という充電期間のなかで、満を持して書いた1冊である。
何度も一緒に働いたことがあるので、著者の丹念で生真面目な性格はよく知っているが、その性格そのままの筆致で、習近平体制の事実上の始まりとなった薄熙来事件から、日中関係、習近平の反腐敗闘争までを、丁寧に漏れなく描き出している。新書として、多くの読者に「習近平時代とは」という問題を考えてもらうのに格好の教科書になるだろう。

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