イラク・クルド(KRG)の独立に向けた住民投票が迫る

執筆者:池内恵 2017年9月1日
エリア: 中東

ついにイラク・クルド独立へ?

中東情勢の9月の注目点といえば、9月25日に予定される、イラク・クルドの独立の是非を問う住民投票である。この住民投票の結果が即座にクルド独立国の設立をもたらすものではないが、独立に向けた決定的な通過点となり得る。

1991年の湾岸戦争に際して、イラク北部のクルド人勢力は米国側に立って蜂起した。フセイン政権によって鎮圧されたものの、米国主導の「飛行禁止区域」の設定によって中央政府の干渉を受けない事実上の自治を得た。イラク北部のクルド人勢力は、フセイン政権が米の侵攻によって崩壊する2003年までの間、非公式ながら自治の既成事実を積み重ねてきた。

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執筆者プロフィール
池内恵(いけうちさとし) 東京大学先端科学技術研究センター グローバルセキュリティ・宗教分野教授。1973年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程単位取得退学。日本貿易振興機構アジア経済研究所研究員、国際日本文化研究センター准教授を経て、2008年10月より東京大学先端科学技術研究センター准教授、2018年10月より現職。著書に『現代アラブの社会思想』(講談社現代新書、2002年大佛次郎論壇賞)、『イスラーム世界の論じ方』(中央公論新社、2009年サントリー学芸賞)、『イスラーム国の衝撃』(文春新書)、『【中東大混迷を解く】 サイクス=ピコ協定 百年の呪縛』 (新潮選書)、 本誌連載をまとめた『中東 危機の震源を読む』(同)などがある。個人ブログ「中東・イスラーム学の風姿花伝」(http://ikeuchisatoshi.com/)。
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