「ロヒンギャ問題」で問われる「スー・チー責任論」より大事なこと

苦悩は続く……(C)EPA=時事

 

 ノーベル平和賞剥奪要求からはじまり、グテレス国連事務総長の「民族浄化と形容するよりほかに適切な表現なし」との発言まで、仏教徒が圧倒的多数を占めるミャンマーにおける少数派イスラム教徒ロヒンギャ族の取り扱いに対するミャンマー政府当局の対応、わけても国家顧問兼外相としてミャンマー政府を率いるアウン・サン・スー・チーに対する国際的非難の声は高まる一方である。おそらく当分は収まることはないだろう。

イギリス植民地政策の犠牲者

 ミャンマー国内で約100万人を数えるといわれるロヒンギャ族は、数年前から隣国のタイやマレーシアへ海路による脱出を繰り返してきた。宗教弾圧が原因だという。今回の陸路での脱出によって、西隣のバングラデシュに逃げのびた数は40万人前後と見られる。

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執筆者プロフィール
樋泉克夫(ひいずみかつお) 愛知県立大学名誉教授。1947年生れ。香港中文大学新亜研究所、中央大学大学院博士課程を経て、外務省専門調査員として在タイ日本大使館勤務(83―85年、88―92年)。98年から愛知県立大学教授を務め、2011年から2017年4月まで愛知大学教授。『「死体」が語る中国文化』(新潮選書)のほか、華僑・華人論、京劇史に関する著書・論文多数。
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