ヨーロピアン・ラプソディ (8)

「違和感」と「孤立感」強めた「カタルーニャ州独立」住民投票

執筆者:大野ゆり子 2017年10月3日
エリア: ヨーロッパ
騒然かつ悲惨な現場の様子を伝える現地紙(筆者提供)

 

 スペイン・カタルーニャ州で10月1日に行われた独立を問う住民投票は、州政府が登録したおよそ534万人の住民の42%余りが投票し、独立賛成が圧倒的多数の90%以上を占めた。しかし同時に、800人近い負傷者を出す最悪のシナリオになってしまった。スペイン政府は違憲である住民投票をカタルーニャ州政府が強行した不法行為が問題なのであり、投票を阻止しようとした中央政府の治安部隊と住民が衝突して多数の負傷者が出てしまったことは、法の秩序のためにやむをえなかったという立場である。ヨーロッパ各国も、憲法を遵守するスペイン政府の立場を支持している。しかしバルセロナに住み、カタルーニャ人と共に今回の投票へのカウントダウンを目撃した筆者は、なぜこれほどの惨事になってしまったのか、法の秩序では割り切れない違和感と孤立感が市民に広がるのを肌で感じている。

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執筆者プロフィール
大野ゆり子(おおのゆりこ) エッセイスト。上智大学卒業。独カールスルーエ大学で修士号取得(美術史、ドイツ現代史)。読売新聞記者、新潮社編集者として「フォーサイト」創刊に立ち会ったのち、指揮者大野和士氏と結婚。クロアチア、イタリア、ドイツ、ベルギー、フランスの各国で生活し、現在、ブリュッセルとバルセロナに拠点を置く。
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