米中「貿易紛争」の行方(下)中国の切り札は「大豆」「原油」「LNG」

「愚か者」だが「共通性」がある2人が「新しい大国関係」を築くか(C)AFP=時事

 

 米トランプ政権が中国に仕掛けた貿易紛争は、米国にとって知財輸出の伸び悩みと中国の半導体産業の台頭への警戒が引き金になったことを(上)で解説した。では、中国はどう対抗するのか。その鍵は、米国産の大豆、原油、液化天然ガス(LNG)が握っている。米国の政権がどう変わろうと、この3つの1次産品こそ2020年代の米国の輸出、ひいては経済を支える商品であり、最大の購入者は中国であるからだ。1980年代以降の日米貿易摩擦では、日本は自らの購買力を利用して対米交渉を有利に導くことができず、半導体産業の衰退を招いた。中国が1次産品の購買力をどこまで使い切れるかが、米中貿易紛争の帰趨と中国産業の将来を決める可能性が高い。

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執筆者プロフィール
後藤康浩(ごとうやすひろ) 亜細亜大学都市創造学部教授、元日本経済新聞論説委員・編集委員。 1958年福岡県生まれ。早稲田大政経学部卒、豪ボンド大MBA修了。1984年日経新聞入社。社会部、国際部、バーレーン支局、欧州総局(ロンドン)駐在、東京本社産業部、中国総局(北京)駐在などを経て、産業部編集委員、論説委員、アジア部長、編集委員などを歴任。2016年4月から現職。産業政策、モノづくり、アジア経済、資源エネルギー問題などを専門とし、大学で教鞭を執る傍ら、テレビ東京系列『未来世紀ジパング』などにも出演していた。現在も幅広いメディアで講演や執筆活動を行うほか、企業の社外取締役なども務めている。著書に『アジア都市の成長戦略』(2018年度「岡倉天心記念賞」受賞/慶應義塾大学出版会)、『ネクスト・アジア』(日本経済新聞出版)、『資源・食糧・エネルギーが変える世界』(日本経済新聞出版)、『アジア力』(日本経済新聞出版)、『強い工場』(日経BP)、『勝つ工場』(日本経済新聞出版)などがある。
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