ロシア・ウクライナ戦争の長期化がヨーロッパ諸国にもたらす秩序と正義のジレンマ
2022年7月16日
NATOを変質させた戦争
今から72年前、冷戦時代初期の1950年6月に、北朝鮮が突如として韓国へ軍事侵攻を開始した。朝鮮戦争の勃発である。それは、ソ連の独裁的指導者ヨシフ・スターリンが、武力による朝鮮半島の統一を目指していた金日成にゴーサインを与えたことで始まったものである。
朝鮮戦争は、地球の裏側のヨーロッパにも多大な影響を与えた。1949年に北大西洋条約機構(NATO)が創設されたとき、それはまだ机上の同盟であった。しかし、朝鮮戦争を機に大幅な軍拡が進められ、真の軍事同盟になっていった。ギリシャやトルコも新たにNATOに加盟し、冷戦の対立が、一挙に軍事化することとなった。
今年2月、今度はヨーロッパにおいてロシアがウクライナに侵攻し、ロシア・ウクライナ戦争が勃発した。ヨーロッパにおける緊張は、否応なく高まった。
6月末にスペインのマドリードで開催されたNATO首脳会議は、ロシアを「最も重大で直接的な脅威」と位置づける新たな戦略を採択した。同時に、NATOの即応部隊を4万人から30万人へと増強することが合意された。さらには、長年にわたって中立国の立場を維持してきたスウェーデンとフィンランドがNATOに加盟する運びにもなった。
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