ボルアルテ大統領の就任から半年が経つが政治混乱の収束は見えない(C)EPA=時事
 

 ペルーでは2000年にアルベルト・フジモリが失脚した後、憲法の規定通り5年ごとに大統領選が行われ、幾つかの課題を抱えながらも政治的安定性が評価されていた。しかし、2018年3月にペドロ・クチンスキが弾劾裁判中に辞任した後、規則正しい大統領交代は狂い始め、5年の間に大統領が5回も交代する異例の事態に発展した。そして現在、ペルーは、南米の中で最も政治が不安定化していると評価される。

 本稿では、2018年以降の政治混乱を俯瞰した後、2022年12月の大統領罷免、その後の抗議活動、選挙の前倒し議論について詳述する。

繰り返された大統領の交代

 ペルーでは、大統領および国会議員は連続して同じ職務に立候補することができず、再度立候補するには1期(5年間)を挟む必要がある。また大統領が罷免等で不在となった場合は、第一副大統領、第二副大統領の順番で大統領職を継承し、そのいずれも不在の場合は国会議長が暫定大統領となり、1年以内に大統領選挙を実施する。

 この規定に従い、クチンスキ辞任後に第一副大統領のマルティン・ビスカラが大統領に昇格し、そのビスカラが2020年11月に国会から罷免されると、国会議長のマヌエル・メリノが大統領に昇格。ところが、そのメリノも抗議活動により僅か数日後に辞任。正副大統領および正副国会議長の一時不在を挟み、国会から選ばれたフランシスコ・サガスティが暫定大統領を務めた。そして2021年6月に大統領選の決選投票が行われ、左派の元教師であるペドロ・カスティジョがフジモリ元大統領の長女である中道右派のケイコ・フジモリを僅差で制し、大統領に就任した。

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