習近平政権「経済安全保障体制」のキーストーンとなる“新BRIKs”

【特別企画】激動経済:「米中産業冷戦」の時代 (第2回)

執筆者:後藤康浩2021年5月14日
ブラジルから中国に輸入された大豆飼料。食肉需要の増加に伴い、飼料も食糧安保の脆弱性となっている ©AFP=時事

 米バイデン政権は予想以上のスピードで対中包囲網の構築を進めた。半導体はじめ最先端技術と製造設備に関して、中国は調達ルートの多くを断たれ、半導体調達は中国の最大の脆弱性になった。一方で習近平政権が着々と体制を整えつつあるのが資源・食糧・エネルギーの旧来型の経済安全保障とユーラシア大陸における物流体系である。その基盤となっているのがブラジル、ロシア、イラン、カザフスタンであり、頭文字を並べれば”BRIKs”。かつて、世界経済の牽引車となった新興国の「BRICS」は米中冷戦で分断されたが、中国はBRICSのメンバーを一部入れ替えた「新BRIKs」によって、米国に対抗しようとしている。それは経済のみならず、軍事的にも米国に対抗する枢軸に発展する可能性を秘めている。

イラン―サウジ関係改善にも中国が影響

 3月27日、テヘランでイランのジャバド・ザリフ外相と中国の王毅外相は経済・安全保障分野での両国間の協力強化を目指す「包括的協力文書」に調印した。25年間という長期の協定で、中国がイラン国内の鉄道や5G(第5世代移動通信システム)のネットワークの整備、油ガス田開発などに総額4000億ドル(約44兆円)を投資、イランは中国に原油、天然ガスを有利な条件で安定供給する内容と言われる。王外相が「永続的で、戦略的な関係」と語ったように、中国とイランの関係は一気に緊密化する。

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