トレードマークの帽子をかぶって大統領就任演説に臨んだカスティジョ氏(C)AFP=時事

 

 新型コロナの感染拡大が、2014年以降経済停滞に喘いだ中南米に深刻な打撃を及ぼしたことは、本誌で報告してきたところである。政府に対する信頼感が一段と低下し、反政府デモや政治不安が広がっている。

  中でも、「太平洋同盟」を構成してグローバル化への改革を推進し、自由市場経済で成長を牽引してきたはずのチリ、コロンビア、ペルーでの政治不安が際立ち、左派政権への転換が現実のものとなりつつある(「同盟」の一角メキシコでは、すでにポピュリズムへの傾斜の強い新興左派政権が誕生している)。

 2000年代に地域で台頭した急進左派政権の潮流を免れてきた国々での、不安定化と左傾化の動きである。

チリ・コロンビア・ペルーに見られる左傾化の動き

 2019年、経済の停滞を背景に、先進国入りを果たしたと見られたチリで反政府デモが激化し、暴力を伴い全土に拡大。国際会議の開催を中止せざるを得ないほどの分断を惹き起こし、格差構造への対応を迫られた。騒乱収束の道筋を新憲法の制定という政治合意に見出し、今年5月に議員数155人(男女同数で、内、先住民枠17人)から構成される議会が選出され、独立系を中心に左派が大勢を占めた。

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