4月の米雇用統計で「平均時給」は前年同月比5.5%増、しかし3月の米消費者物価上昇率も同8.5%を記録した。雇用の強さと物価上昇のデッドヒートが続いている(写真はパウエルFRB議長=5月4日)  (C)EPA=時事

下げ相場を演出した「2人のP」

 Sell in May(5月の売り)。相場格言を地で行くように、世界の株式市場が調整局面に入っている。なかでもニューヨーク・ダウ工業株30種平均は5月13日で終わる週まで、7週連続で下落した。週間続落記録としては、ITバブル崩壊を受けた2001年5~7月以来、21年ぶりの長さとなった。

 2人のPが下げ相場を演出した。資源インフレに拍車をかけた、ウラジーミル・プーチン大統領の率いるロシアのウクライナ侵攻。インフレ抑制へと必死に金融引き締めのブレーキを踏む、ジェローム・パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長。一緒に並べるのはどうかと思うが、プーチン氏とパウエル氏である。

 そしてこの経営者の表情からも笑顔が消えていた。ちょうど1年前、金の卵を産むガチョウの絵をバックに、空前の好決算を発表した孫正義ソフトバンクグループ会長である。22年3月期が1兆7080億円もの空前の最終赤字となった主因は、何と言っても世界のハイテク企業に投資するビション・ファンド1と2の投資損失だ。

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