「停戦後、和平前」の支援開始という挑戦

執筆者:谷口美代子2022年10月29日
2014年3月27日、包括和平合意の調印式に臨んだMILFのムラド議長(左から2人目)とアキノ・フィリピン大統領(同5人目)ら  (C)EPA=時事

   ミンダナオ平和構築支援は、緊急の人道支援と中長期的な開発支援の間に生まれる、いわゆる「ギャップ問題」を解消するために、「継ぎ目のない支援(Seamless Assistance)」を実践してきた事例ともいわれる[1]緒方貞子氏は、紛争直後、復興の早い段階から迅速に事業に着手できるようにして、人道支援から開発支援へスムーズに移行できる準備をすることの重要性を説いていた。本稿では、ポスト冷戦期に日本が平和構築支援を本格化したミンダナオを事例とし、その継ぎ目のない支援がどのように始まったのかを中心に解説する。

1. 冷戦後に国際社会が直面した「新たな戦争」

   冷戦の終結直後、先進民主主義諸国では、東西間のイデオロギー対立から解放され、国際平和が実現されるとの将来に対する期待感が高まったが、その後、国際社会が直面したのは、「新たな戦争」(=民族紛争)への対処だった。

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