フィリピン新政権で懸念される「ミンダナオ和平」停滞と過激派の台頭

執筆者:谷口美代子 2022年7月20日
タグ: 紛争
エリア: アジア
テロはミンダナオだけでなく、フィリピン社会全体に脅威を拡散する[マラカニアン宮殿(大統領府)で大統領警護グループ(PSG)の指揮官交代式に臨んだボンボン・マルコス大統領=2022年7月4日](C)EPA=時事
独裁者と呼ばれたフェルディナンド・マルコスが強化したミンダナオの「ムスリム分断」構造は、先の総選挙でも支持分裂に影響した。新大統領のミンダナオ和平への方針は今のところ不明だが、対立候補を支持した和平プロセスの当事者、UBJP/MILFの政治的影響力低下の可能性は否定できない。これが和平停滞につながれば、MILF内強硬派が過激派に傾倒する懸念がある。

1. マルコス新政権誕生の衝撃?

「ピープルパワー時代の終焉」「独裁者一族の復権」「マルコス黄金期の幻想」。2022年5月のフィリピン大統領選挙と相前後して、こうしたセンセーショナルな見出しがメディアを賑わす。実際、1986年の人民革命によって国を追われた独裁者マルコスの一族が最高権力の座に就いたことには、民衆による政治変動をメディア越しに「共有体験」した多くの日本人にも衝撃を与えたのではないだろうか。

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カテゴリ: 政治
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執筆者プロフィール
谷口美代子(たにぐちみよこ) 宮崎公立大学教授、早稲田大学アジア太平洋研究センター 特別センター員。東京大学大学院総合文化研究科国際社会科学専攻博士課程修了。博士(国際貢献)。(独)国際協力機構(JICA)平和構築シニアアドバイザーを経て現職。米国国防総省ダニエル・イノウエ・アジア太平洋安全保障センター元研修員。専門分野は、紛争・平和研究、国家建設、東南アジア地域研究(特にフィリピン政治、ミンダナオ)、安全保障など。現在、JICA緒方貞子平和開発研究所にて国際共同研究にも従事。主な著書に『平和構築を支援する―ミンダナオ紛争と和平への道』(名古屋大学出版会、2020年)などがある。第32回アジア・太平洋賞特別賞、第24回 国際開発研究 大来賞など受賞。
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