プレゼンス UNHCR『世界難民白書二〇〇〇』

 緒方貞子が国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の第八代高等弁務官に就任したのは一九九一年一月だった。 冷戦後の「世界新無秩序」がその面妖にして醜悪な地肌をむき出しにしはじめた時だった。東西イデオロギーと米ソ対立に伴う代理戦争型の紛争ではなく、宗教、民族、国籍、人種、言語、地域といった人々のアイデンティティにからむ紛争が散乱しはじめた時に当たった。 最初の洗礼はイラクからのクルド人難民の波だった。緒方は直ちにヘリコプターでイラクとの国境地帯に飛んだ。狭い山道が車やトラクター、歩く人々で立錐の余地もないほどだった。

カテゴリ: カルチャー
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執筆者プロフィール
船橋洋一 アジア・パシフィック・イニシアティブ理事長。1944年北京生まれ。東京大学教養学部卒。1968年、朝日新聞社入社。朝日新聞社北京特派員、ワシントン特派員、アメリカ総局長、コラムニストを経て、2007年から2010年12月まで朝日新聞社主筆。米ハーバード大学ニーメンフェロー(1975-76年)、米国際経済研究所客員研究員(1987年)、慶應義塾大学法学博士号取得(1992年)、米コロンビア大学ドナルド・キーン・フェロー(2003年)、米ブルッキングズ研究所特別招聘スカラー(2005-06年)。2013年まで国際危機グループ(ICG)執行理事を務め、現在は、英国際問題戦略研究所(IISS)Advisory Council、三極委員会(Trilateral Commission)のメンバーである。2011年9月に日本再建イニシアティブを設立し、2016年、世界の最も優れたアジア報道に対して与えられる米スタンフォード大アジア太平洋研究所(APARC)のショレンスタイン・ジャーナリズム賞を日本人として初めて受賞。近著に『フクシマ戦記 10年後の「カウントダウン・メルトダウン」』(文藝春秋)、『自由主義の危機: 国際秩序と日本』(共著/東洋経済新報社)、『地経学とは何か』(文春新書)、『カウントダウン・メルトダウン』(第44回大宅賞受賞作/文春文庫)など著書多数。
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