開戦後初めて、ロシアがウクライナ軍を陣地で迎え撃つ展開になっている[ドネツク州の前線近くで軍事訓練を行う第93機械化旅団の戦車兵たち=2023年8月1日](C)AFP=時事

 ロシア・ウクライナ戦争が始まってから1年半が過ぎつつある。ウクライナは、2022年の2月から3月のロシアの電撃的な侵攻を凌ぎきってキーウ防衛に成功し、4月からのドンバス地方での激戦を経て、8月末にはヘルソン・ハルキウ方面での反攻に成功し、冬の膠着を迎えた。この時点でも、ウクライナは引き続きロシアに全領土の2割弱を占領され続けており、その奪回を目指し、2023年6月上旬になって、米欧から援助された戦闘車両を中心とする反攻作戦を開始した。

 しかし、ロシアもまたこの反攻に備えて防備を固めており、ウクライナ側は苦戦を強いられている。この苦戦の要因は何か、そして、この後でどのような展開をたどっていくか考えてみたい。

1.ウクライナの反転攻勢の狙い

 2023年6月初旬、ウクライナ軍は反転攻勢を開始した。2022年8月末のヘルソン・ハルキウ攻勢以来、約9カ月ぶりのウクライナ側の攻勢であった。具体的には、トクマクからメリトポリを狙うザポリージャ戦線、ベリカノボシルカからベルジャンシク・マリウポリを狙うドネツク南部戦線、さらに2022年後半から2023年春まで激戦が繰り広げられたバフムト戦線の3つの攻勢軸から反攻に出た。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。