饗宴外交の舞台裏
饗宴外交の舞台裏(156)

ロイヤル・ウェディングを彩った「緊縮財政」昼食会と「超豪華」晩餐会

西川恵
執筆者:西川恵 2011年5月17日
カテゴリ: 国際
エリア: ヨーロッパ

 英国のウィリアム王子とキャサリン・ミドルトンさんのロイヤル・ウェディングが行なわれた4月29日、バッキンガム宮殿では昼夜2つの饗宴がもたれた。1つはエリザベス女王主催のレセプション。もう1つは、チャールズ皇太子主催の晩餐会である。
 エリザベス女王主催の公式レセプションには、ウエストミンスター寺院での結婚式に参列した各国の王族、政府首脳ら約650人が招かれた。結婚したばかりのカップルのお披露目と、結婚式への参列に対する謝意を兼ねたこのレセプション、緊縮財政の折、国民の厳しい視線を意識して立食となった。
 宮殿の広報が発表したメニューによると、カニのサラダの前菜からチョコレートケーキのデザートまで22品。食べやすいように一口大のカナペでざっと1万個が用意された。宮殿お抱えのマーク・フラナガン料理長を中心とする21人の料理人が担当した。

シャンパンは英王室定番のポール・ロジェ

バルコニーでキスを披露した2人(c)AFP=時事
バルコニーでキスを披露した2人(c)AFP=時事

 ソフトドリンクからワイン、スコッチまで多種多様な飲みものが出されたが、シャンパンは英王室の饗宴では定番ともいえるポール・ロジェ。チャーチル元首相の大のお気に入りで、所有する競走馬にポール・ロジェの名を冠したほどだ。1981年のチャールズ皇太子とダイアナ妃の結婚レセプションでも使われた。レセプションのさ中、カップルは中座して宮殿正面のバルコニーに出て、待ち構えた観衆に手を振って応え、熱いキスを披露した。  その夜、ウィリアム王子の父のチャールズ皇太子が晩餐会を催した。昼とは打って変わってカップルの友人、双方の親戚、親交のある著名人ら、気心が知れた者を招いた内輪の集まりだった。といっても招待者は300人に膨れた。サッカーのベッカム選手や、歌手のエルトン・ジョンらの顔もあった。  ブラックタイのウィリアム王子と白のイブニングドレス姿のキャサリンさん。ドレスはウェディングドレスと同じ英高級ブランド「アレキサンダー・マックイーン」のデザイナー、サラ・バートンさんのデザインだった。新カップルを囲んで食前酒の歓談がしばし続いた後、一同は晩餐会場の大広間に招き入れられた。  10人がけの丸テーブルがざっと30卓。各テーブルの中央には燭台と花飾りがあしらわれていた。カップルのたっての希望で料理を担当したのはロンドンで自分の名を冠した超高級レストランを経営するスイス人のオーナーシェフ、アントン・モジマン氏。重いソースやバター、クリームなどを極力排し、厳選した有機栽培の野菜や有機飼育の肉を使い、素材の味を生かした料理で知られる。カップルが結婚前日の昼にも店を訪れたほどのお気に入りのシェフだ。

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執筆者プロフィール
西川恵
西川恵 毎日新聞客員編集委員。1947年長崎県生れ。テヘラン、パリ、ローマの各支局長、外信部長、論説委員を経て、今年3月まで専門編集委員。著書に『エリゼ宮の食卓』(新潮社、サントリー学芸賞)、本誌連載から生れた『ワインと外交』(新潮新書)、『国際政治のゼロ年代』(毎日新聞社)、訳書に『超大国アメリカの文化力』(岩波書店、共訳)などがある。2009年、フランス国家功労勲章シュヴァリエ受章。本誌連載に加筆した最新刊『饗宴外交 ワインと料理で世界はまわる』(世界文化社)が発売中。
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