「世界一の不在」ようやく脱却、ベルギー政府の存在感

国末憲人
執筆者:国末憲人 2011年12月6日
カテゴリ: 国際 政治 文化・歴史
エリア: ヨーロッパ

 いかに大切なものであろうと、これほど長期間の不在が続けば、存在自体のありがたみが薄れてしまう。それが恋人なら、新しい出会いを探ればいい。だが、いなくなったのが「政府」だったら、どう代わりを探すか。

 南北対立に小党乱立も相まって組閣ができず、暫定内閣の状態が続いていたベルギーで、ワロン系の社会党(PS)のエリオ・ディルポ党首が5日夜、国王から首相指名を受けた。この間の「無政府」の状態は、昨夏の総選挙以来、540日に及ぶ。やはり昨年の総選挙以降組閣まで二百数十日間を要したイラクをとっくに抜き去って、世界一の不名誉記録を更新していた。

 ベルギーは、約1060万人あまりの人口のうち、1%未満のドイツ語人口やアラブ系移民らを除いて、北部の6割弱がオランダ語を、南部の3割強がフランス語を話す。豊かなフラマン系(オランダ語圏)と比較的貧しいワロン系(フランス語圏)との対立は80年代から激化し、双方で自治拡大を求める動きも強まった。93年には、政府の権限を北部、南部、ブリュッセルの3地域などに大幅に移譲する連邦国家制度に移行した。

 2007年、分権強化をうたうフラマン系右派のキリスト教民主フランドル党(CD&V)が下院で第一党となったのに対し、ワロン系が反発して一時、政権が樹立できなくなった。その後何とか収まったのは、CD&V出身ながら調整型のファンロンパイ下院議長が08年の年末に首相に就任し、融和を進めたからだった。しかし、09年にファンロンパイ氏が欧州連合(EU)大統領に選出されると、再び調整役を欠いた。昨年6月13日の総選挙以後、連立交渉がまとまらないまま時ばかりが過ぎた。

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執筆者プロフィール
国末憲人 1963年岡山県生まれ。85年大阪大学卒業。87年パリ第2大学新聞研究所を中退し朝日新聞社に入社。パリ支局長、論説委員を経て、現在はGLOBE編集長、青山学院大学仏文科非常勤講師。著書に『自爆テロリストの正体』『サルコジ』『ミシュラン 三つ星と世界戦略』(いずれも新潮社)、『ポピュリズムに蝕まれるフランス』『イラク戦争の深淵』『巨大「実験国家」EUは生き残れるのか?』(いずれも草思社)、『ユネスコ「無形文化遺産」』(平凡社)、『ポピュリズム化する世界』(プレジデント社)など。
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