人事院総裁交替の意味

原英史
執筆者:原英史 2012年4月10日
カテゴリ: 政治 経済・ビジネス
エリア: 日本

 

 公務員給与カットに関する政府の対応を「憲法違反」と国会で断じていた江利川毅人事院総裁が7日に退任。後任は、JR東海出身の原恒雄氏が任命された。
 
 人事院総裁を含む人事官(人事官3人のトップが総裁)の任期は、国家公務員法で、以下のように規定されている。
・原則4年。前任者の任期途中で補欠で任命された場合は、前任者の任期。
・再任は可能。ただし、引き続き12年を超えて在任できない。
 
 江利川氏の場合、前任の谷公士氏(元郵政次官)が政権交代に伴って任期途中で退任したため、2009年11月に就任。この4月に前任者の任期満了を迎えた(本人が務めたのは2年5月)。
 本来4年の任期のうち「0.6期」程度しか務めていないので、通常なら2~3期務める総裁が多いことを考えると、事実上の更迭に近いとも言える。
 
 今回の交替人事の理由は、
1)冒頭に紹介した、「人事院勧告を実施しないことは憲法違反」答弁のほか、
2)「公務員新規採用の大幅削減」に反対、
3)「65歳まで再任用」は難しいと発言するなど、
政権ととかくぶつかってきたことが要因のようだ。
 
 なお、筆者は、これら3点のうち、
1)は、人事院の組織防衛を目的としたおかしな発言と考えているが、
 
2)と3)は、江利川氏の主張に基本的に賛成だ。
「再任用はすべて認め、新規採用は大幅削減」というのは、要するに、現在の職員の身分を守って、これから社会に出ようとする若者にしわを寄せるだけ。
労働組合構成員にとってはよいかもしれないが、官僚組織をまともに機能させる上では明らかに不適当な施策だろう。
 
 ただ、江利川氏は、厚生労働次官と内閣府次官を歴任し、いわば幹部官僚の代表者。
 こういう立場の人物が、政権の方針を公然と批判することは珍しい。
 
 一連の流れは、労組の顔色はうかがいつつ、パフォーマンス政治(新規採用大幅削減など)だけは進めようとする民主党政権に対し、幹部官僚たちも見切りをつけた・・という表れとみてよいのでないか。
 
(原 英史)
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執筆者プロフィール
原英史
原英史 1966年東京都生れ。東京大学法学部卒、米シカゴ大学院修了。89年通商産業省(現・経済産業省)入省。大臣官房企画官、中小企業庁制度審議室長などを経て、2007年から安倍・福田内閣で行政改革・規制改革担当大臣の補佐官を務める。09年7月退職。株式会社政策工房を設立し、政策コンサルティング業を営む。大阪府・市特別顧問、国家戦略特区ワーキンググループ委員(内閣府)、社会保障審議会年金事業管理部会委員(厚生労働省)を務めるほか、NPO法人万年野党理事、「地方議会を変える国民会議」発起人など。著書に『官僚のレトリック』(2010年、新潮社)、『「規制」を変えれば電気も足りる』(2011年、小学館101新書)、『日本人を縛りつける役人の掟/岩盤規制を打ち破れ』(2014年、小学館)、『国家と官僚』(2015年、祥伝社新書)。
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