公務員給与カットに関する政府の対応を「憲法違反」と国会で断じていた江利川毅人事院総裁が7日に退任。後任は、JR東海出身の原恒雄氏が任命された。
人事院総裁を含む人事官(人事官3人のトップが総裁)の任期は、国家公務員法で、以下のように規定されている。
・原則4年。前任者の任期途中で補欠で任命された場合は、前任者の任期。
・再任は可能。ただし、引き続き12年を超えて在任できない。
江利川氏の場合、前任の谷公士氏(元郵政次官)が政権交代に伴って任期途中で退任したため、2009年11月に就任。この4月に前任者の任期満了を迎えた(本人が務めたのは2年5月)。
本来4年の任期のうち「0.6期」程度しか務めていないので、通常なら2~3期務める総裁が多いことを考えると、事実上の更迭に近いとも言える。
今回の交替人事の理由は、
1)冒頭に紹介した、「人事院勧告を実施しないことは憲法違反」答弁のほか、
2)「公務員新規採用の大幅削減」に反対、
3)「65歳まで再任用」は難しいと発言するなど、
政権ととかくぶつかってきたことが要因のようだ。
なお、筆者は、これら3点のうち、
1)は、人事院の組織防衛を目的としたおかしな発言と考えているが、
2)と3)は、江利川氏の主張に基本的に賛成だ。
「再任用はすべて認め、新規採用は大幅削減」というのは、要するに、現在の職員の身分を守って、これから社会に出ようとする若者にしわを寄せるだけ。
労働組合構成員にとってはよいかもしれないが、官僚組織をまともに機能させる上では明らかに不適当な施策だろう。
ただ、江利川氏は、厚生労働次官と内閣府次官を歴任し、いわば幹部官僚の代表者。
こういう立場の人物が、政権の方針を公然と批判することは珍しい。
一連の流れは、労組の顔色はうかがいつつ、パフォーマンス政治(新規採用大幅削減など)だけは進めようとする民主党政権に対し、幹部官僚たちも見切りをつけた・・という表れとみてよいのでないか。
(原 英史)
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