【インド】軍事衝突から50年――官民協調で推進する対中実利外交

執筆者:山田剛 2012年11月27日
カテゴリ: 国際

 両国合わせて25億人超、世界1、2位の人口を抱える大国であるインドと中国は、新興国の両雄として、そしてBRICSの中核として、なお国際社会や多国籍企業から注目を集めている。
 国境紛争に端を発した1962年の印中軍事衝突から10月でちょうど50周年を迎えたが、印中両国は今も未解決の国境やチベットなどの問題を抱えている。最近でも中国が新たに発行したパスポートに、両国が領有権を争う地域が中国領のように記載されているとして、インドは11月25日から対抗措置として中国人のパスポートに係争地をインド領とした地図入りのビザを貼り始めた。印中両国間では貿易や投資を巡ってもしばしば摩擦が起きているが、双方は今のところ巧みに紛争を回避し、経済外交の推進によって互いの国益を最大化する努力を続けている。

 中国政府は、英領インド(当時)とチベットが1914年に定めたヒマラヤ山脈東側の国境線(マクマホン・ライン)を承認しておらず、過去にしばしば、同ラインのインド側にあるアルナチャル・プラデシュ州の一部について領有権を主張してきた。また、インド側カシミール地方北東部一帯のアクサイ・チンでは、中国の新疆ウイグル自治区とチベット自治区を結ぶ幹線道路を建設したことが紛争の発端となり、今も中国の実効支配が続いている。
 1959年秋以降、「国境」付近で相次いだ印中両軍による小競り合いは、62年10月に大規模な軍事衝突へと発展。終始戦闘を優位に進めた中国は同年11月に一方的停戦を宣言して撤退したが、現在もこれらの国境は未確定のままで、印中間における最大の懸案となっている。また、インド政府が50年以上にわたって自国内にダライ・ラマ14世率いるチベット亡命政府を「保護」していることに、中国は不快感を隠していない。何よりも、総延長3350キロにわたって国境を接する両国がともに核武装して対峙しているという現実の重みは、「尖閣」の比ではないだろう。

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執筆者プロフィール
山田剛 日本経済研究センター主任研究員。1963年生れ。日本経済新聞社入社後、国際部、商品部などを経て、97年にバーレーン支局長兼テヘラン支局長、2004年にニューデリー支局長。08年から現職。中東・イスラム世界やインド・南アジアの経済・政治を専門とする。著書に『知識ゼロからのインド経済入門』(幻冬舎)などがある。
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