饗宴外交の舞台裏
饗宴外交の舞台裏(177)

国賓訪問のブラジルをフランスはなぜ「2番手のワイン」で饗したか

西川恵
執筆者:西川恵 2013年2月13日
カテゴリ: 国際
エリア: ヨーロッパ 中南米
 エリゼ宮を歩くルセフ大統領(手前左)とオランド大統領(同右)。後ろはパウラさん(左)とトリルべレールさん(右)。(c)AFP=時事
エリゼ宮を歩くルセフ大統領(手前左)とオランド大統領(同右)。後ろはパウラさん(左)とトリルべレールさん(右)。(c)AFP=時事

 フランスのオランド大統領(58)が昨年5月の就任後、初めての国賓として迎えたのはブラジルの女性大統領ジルマ・ルセフ氏(65)だった。昨年12月11、12の両日、ルセフ大統領はエリゼ宮に赤絨毯で迎えられた(国賓訪問のときだけ表玄関に赤絨毯が敷かれる)。訪問の中で最も儀礼度の高い国賓訪問には「友好を最高レベルで確認する」という象徴的な意味があるが、ブラジル側にはフランスと提携強化に乗り出す差し迫った思惑があった。

 フランスにとってブラジルは市場としても重要だが、石油などのエネルギー資源開発や、原子力、兵器などフランスが優越する分野で協力の余地が大きい。一方、ブラジルにとって欧州連合(EU)は最重要の市場の1つだ。ルセフ大統領は11月にイベロアメリカ首脳会議に出席のためスペインを訪問したばかり。1カ月で2度の訪欧には、EUを睨んで南欧やフランスとの提携を強化する狙いがあった。

 

ユーロ危機に巻き込まれたブラジル側の期待

 約10年にわたる高度成長の後、ユーロ危機の影響でブラジルの経済は急減速。2012年の成長率は1.5%前後にとどまる見通しだ。同国は財政規律を重視する緊縮財政の旗振り役のドイツを「市場を萎縮させている」「間違った処方箋で近隣国を窮乏させている」と述べ、名指しは避けつつも批判してきた。一昨年11月にブリュッセルを訪問したときも「ユーロ危機克服には成長こそ重要だ」と繰り返した。

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執筆者プロフィール
西川恵
西川恵 毎日新聞客員編集委員。1947年長崎県生れ。テヘラン、パリ、ローマの各支局長、外信部長、論説委員を経て、今年3月まで専門編集委員。著書に『エリゼ宮の食卓』(新潮社、サントリー学芸賞)、本誌連載から生れた『ワインと外交』(新潮新書)、『国際政治のゼロ年代』(毎日新聞社)、訳書に『超大国アメリカの文化力』(岩波書店、共訳)などがある。2009年、フランス国家功労勲章シュヴァリエ受章。本誌連載に加筆した最新刊『饗宴外交 ワインと料理で世界はまわる』(世界文化社)が発売中。
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