議論されなかったゴラン高原UNDOF要員拘束事件

池内恵
執筆者:池内恵 2013年3月16日
エリア: 中東

  もう少し報じられ、議論されてもよさそうなものだが、と思う出来事があった。3月6日に、シリア・ゴラン高原で国際連合兵力引き離し監視軍(United Nations Disengagement Observer Force:略称UNDOF)の要員が、反政府武装勢力の一派によって拘束された事件である。拘束されたのは21名のフィリピン人要員だった。「ヤルムークの殉教者旅団(Martyrs of Yarmouk Brigades)」を名乗る犯行グループはビデオ声明を発表し、ゴラン高原のジャムラ村(地理的にはゴラン高原の一部で、非武装地帯とシリアの統治下にあるダルア県との境界地域にある)からの政府軍の撤退を要求した。

 UNDOFとは、1973年の第4次中東戦争後のイスラエル・シリア間の緩衝地帯を監視する国連平和維持軍であり、1974年5月末の国連安保理決議350に基づき展開している。イスラエルは1967年の第3次中東戦争以来ゴラン高原を占領しているが、イスラエルによる占領地と、シリアのダルア県の間の非武装地帯をUNDOFが監視する形である。

 通常は総勢約1000人からなるUNDOF部隊は、フィリピンが司令官と多くの要員を提供する他、オーストリア、カナダ、クロアチア、そして日本が要員を派遣してきた。

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執筆者プロフィール
池内恵
池内恵 東京大学先端科学技術研究センター准教授。1973年生れ。東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程単位取得退学。日本貿易振興機構アジア経済研究所研究員、国際日本文化研究センター准教授を経て、2008年10月より現職。著書に『現代アラブの社会思想』(講談社現代新書、2002年大佛次郎論壇賞)、『イスラーム世界の論じ方』(中央公論新社、2009年サントリー学芸賞)、『イスラーム国の衝撃』(文春新書)、本誌連載をまとめた『中東 危機の震源を読む』などがある。個人ブログ「中東・イスラーム学の風姿花伝」(http://ikeuchisatoshi.com/)。
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