「セキュリティー・ダイヤモンド構想」の危うさと《熱帯への進軍》

樋泉克夫

 シンガポールに関連した最近の出来事を見ていると、安倍晋三政権が提唱する「アジアの民主主義セキュリティー・ダイヤモンド」構想の脆弱性を強く感じる。思いつき、とまではいわない。だが「価値観外交」とはいうものの、その実質的基盤をどこに置くのか。はたして日本は、どのような形で「セキュリティー・ダイヤモンド」を構築し、維持し、具体的に対中外交に結び付けようと企図しているのか――ことばのみが耀き、先走り、その具体像が一向に浮かんでこない。

 いま中国の怒濤のような《熱帯への進軍》が曖昧模糊とした安倍アジア外交の間隙を縫って、東南アジアを突き動かしている。

 

 2月18日、中国はパキスタンとの間でパキスタンのグワダル港の経営について合意に達し、2億5000万ドルを投じて同港施設の初期的整備を行なうこととなった。じつは同港の経営権を保持していたのはシンガポールの国際港務集団だが、ここ8年間ほどは手付かずのままだったらしい。そこで同集団が中国の海外集団有限公司に経営権を移譲したというのだ。いわば中国の企業がシンガポールの企業から、同港を“居ぬき”で譲り受けたということだろう。であればこそ、若干の改修工事で使用可能となるに違いない。

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執筆者プロフィール
樋泉克夫
樋泉克夫 愛知大学教授。1947年生れ。香港中文大学新亜研究所、中央大学大学院博士課程を経て、外務省専門調査員として在タイ日本大使館勤務(83―85年、88―92年)。98年から愛知県立大学教授を務め、2011年より現職。『「死体」が語る中国文化』(新潮選書)のほか、華僑・華人論、京劇史に関する著書・論文多数。
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