「セキュリティー・ダイヤモンド構想」の危うさと《熱帯への進軍》

樋泉克夫

 シンガポールに関連した最近の出来事を見ていると、安倍晋三政権が提唱する「アジアの民主主義セキュリティー・ダイヤモンド」構想の脆弱性を強く感じる。思いつき、とまではいわない。だが「価値観外交」とはいうものの、その実質的基盤をどこに置くのか。はたして日本は、どのような形で「セキュリティー・ダイヤモンド」を構築し、維持し、具体的に対中外交に結び付けようと企図しているのか――ことばのみが耀き、先走り、その具体像が一向に浮かんでこない。

 いま中国の怒濤のような《熱帯への進軍》が曖昧模糊とした安倍アジア外交の間隙を縫って、東南アジアを突き動かしている。

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執筆者プロフィール
樋泉克夫 愛知県立大学名誉教授。1947年生れ。香港中文大学新亜研究所、中央大学大学院博士課程を経て、外務省専門調査員として在タイ日本大使館勤務(83―85年、88―92年)。98年から愛知県立大学教授を務め、2011年から2017年4月まで愛知大学教授。『「死体」が語る中国文化』(新潮選書)のほか、華僑・華人論、京劇史に関する著書・論文多数。
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