シリア問題を「対テロ戦争」にすり替えようと試みるアサド政権

池内恵
執筆者:池内恵 2014年1月23日
カテゴリ: 国際 外交・安全保障
エリア: 中東

1月22日から、スイスのモントルーで、シリア問題をめぐるジュネーブⅡ会議が開かれている

2012年6月に、米露を含む主要国がシリア問題への解決策をめぐって、玉虫色の「ジュネーブ合意」を結んだ。この合意の趣旨は、内戦の当事者に挙国一致の新政権を目指して国際社会の仲介の下で話し合うように要請したものだが、「誰が当事者なのか」「実際に現地で影響力のある勢力が参加するのか」「アサド大統領の退陣を前提とするか否か」等々について、米露や、アサド政権、反体制勢力のそれぞれが、異なった読み方をできる文書である。

このような曖昧な文書に基づいた今回のジュネーブⅡ会議なので、当然、参加する勢力も、議題も、当日になるまで定まらなかった。きわめて流動的なものだ(場所もジュネーブからモントルーに移しているので、「モントルー会議」と呼んだ方がいいような気がするが)。もちろん停戦や新体制移行といった結果が出るとは誰も予想していない。

「対テロリズム」のアジェンダ設定を図るアサド政権

アサド政権は、昨年9月に米露と「化学兵器廃棄」で合意したので、化学兵器廃棄が終わるまでは、その当事者として政権の存続を事実上黙認されたとみている。だから少なくとも2014年中は反体制派を一般市民もろとも殺戮することに「許可」を得たとみなしている。事実上この認識は正しい。

執筆者プロフィール
池内恵
池内恵 東京大学先端科学技術研究センター准教授。1973年生れ。東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程単位取得退学。日本貿易振興機構アジア経済研究所研究員、国際日本文化研究センター准教授を経て、2008年10月より現職。著書に『現代アラブの社会思想』(講談社現代新書、2002年大佛次郎論壇賞)、『イスラーム世界の論じ方』(中央公論新社、2009年サントリー学芸賞)、『イスラーム国の衝撃』(文春新書)、本誌連載をまとめた『中東 危機の震源を読む』などがある。個人ブログ「中東・イスラーム学の風姿花伝」(http://ikeuchisatoshi.com/)。
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