「風評」の固定化:「東北被災地」に立ちはだかる大きな壁

寺島英弥
執筆者:寺島英弥 2014年4月2日
カテゴリ: 社会
エリア: 日本

 2011年3月11日の東日本大震災から丸3年を迎えた3月、いくつかの被災地や、復興の課題を議論する場を訪ねた。そこで共通して耳にした問題がある。「風評」の固定化である。

 青々としたネギの畑が、福島県南相馬市原町区北萱浜に広がっている。2011年3月11日の津波で住民47人が犠牲になった北萱浜の人々は、福島第1原発事故を逃れて、高齢者を守りながら車を連ねて福島、南会津の山中まで避難の旅を強いられた。見渡す限り土色の荒野の風景になった古里の地で、家も農機具も田畑も流された跡に立ち、住民が取り組んだのは避難中に亡くなった同胞6人を加えた慰霊碑建立、そして、ネギ栽培の再開だった。

 

検査をクリアしても……

 南相馬市の海岸部、北萱浜の被災地に開かれたネギ畑と林さん(筆者撮影)
南相馬市の海岸部、北萱浜の被災地に開かれたネギ畑と林さん(筆者撮影)

 13年1月、国や市の農業復旧支援策を用い、必要な農業設備の無償貸与を受けて「北萱浜機械利用組合」(8人)をつくり、除塩、除染し開墾した1ヘクタールの畑で、3月半ばから栽培を始めた。「ネギは、どの農家にもなじみが深く、秋から冬の需要期を含めて1年中、継続して作れる。役員報酬などなしで、みんな、働いた分の収入を平等に分ける。農協への出荷、仮設住宅での販売などで軌道に乗せ、住民が戻って働く場にしたい」と、組合長で北萱浜区長でもある林一重さん(69)は語った。ネギは順調に伸び、出荷されている。

執筆者プロフィール
寺島英弥
寺島英弥 河北新報編集委員。1957年福島県生れ。早稲田大学法学部卒。東北の人と暮らし、文化、歴史などをテーマに連載や地域キャンペーン企画に長く携わる。「こころの伏流水 北の祈り」(新聞協会賞)、「オリザの環」(同)、「時よ語れ 東北の20世紀」など。フルブライト奨学生として2002-03年、米デューク大に留学。主著に『シビック・ジャーナリズムの挑戦 コミュニティとつながる米国の地方紙』(日本評論社)、『海よ里よ、いつの日に還る』(明石書店)。3.11以降、被災地における「人間」の記録を綴ったブログ「余震の中で新聞を作る」を更新中。
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