イラク内戦に介入するイランが米国に囁く「協力」

池内恵
執筆者:池内恵 2014年6月15日
カテゴリ: 国際 外交・安全保障
エリア: 中東

 6月10日にイラク北部モースルを制圧したISIS(イラクとシャームのイスラーム国家)は南下してバグダードに向かった。これに対してマーリキー首相は13日にサーマッラーを訪問して軍・部隊にテコ入れした。同日の金曜礼拝ではイラクのシーア派宗教指導者の最高権威シスターニー師の声明が読み上げられ、シーア派信徒に祖国防衛のための義勇兵として参集するよう呼びかけた。サーマッラーに配置されたイラク国軍部隊はISISの襲撃予告を受けて多くが離脱してしまったようだが、マーリキー政権支持派の民兵組織やシーア派義勇兵を動員してISISの攻勢を食い止めているようだ。

 ISISの勢力範囲は、スンナ派が大多数を占める4県、すなわちニネヴェ、アンバール、サラーフッディーン、ディヤーラで急速に拡大したが、その外では住民の支持をそれほど得られないだろう。イラク戦争後の体制を定めた2005年10月の憲法制定国民投票では、これらの県では軒並み過半数あるいは3分の2が反対票を投じていた。それに対してクルド3県や、シーア派が多い9県、そして首都バグダードやキルクークではいずれも圧倒的多数が現憲法に賛成票を投じた【「イラクのどこに希望を見いだすのか 『新国家』成立を左右する『キルクーク問題』の行方」『フォーサイト』2005年12月号】。2006年以降急激に増えたテロや宗派紛争、そして過激派の伸長は、現体制の制度の枠内で政治を行うことにそもそも否定的なスンナ派諸勢力と、シーア派主体の現政権が、妥協を拒否し対決し続けているところに由来する。

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執筆者プロフィール
池内恵
池内恵 東京大学先端科学技術研究センター准教授。1973年生れ。東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程単位取得退学。日本貿易振興機構アジア経済研究所研究員、国際日本文化研究センター准教授を経て、2008年10月より現職。著書に『現代アラブの社会思想』(講談社現代新書、2002年大佛次郎論壇賞)、『イスラーム世界の論じ方』(中央公論新社、2009年サントリー学芸賞)、『イスラーム国の衝撃』(文春新書)、本誌連載をまとめた『中東 危機の震源を読む』などがある。個人ブログ「中東・イスラーム学の風姿花伝」(http://ikeuchisatoshi.com/)。
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