「エボラ出血熱」と「アフリカの食文化」の関係

白戸圭一
執筆者:白戸圭一 2014年8月20日
エリア: アフリカ

 ギニア、シエラレオネ、リベリアの西アフリカ3カ国で感染が拡大しているエボラ出血熱は、本稿の執筆時点で死者が1000人を超え、感染疑いも含めた感染者数は2000人を超えた。現地で治療にあたる「国境なき医師団」は、流行の終息には最低でもあと6カ月はかかるとの見通しを示している。1976年にエボラ出血熱のヒトへの感染が確認されて以降、最大規模の流行である。

 航空機によって世界が結ばれている今日、遠く西アフリカで流行している劇症の感染症が、日本を含む世界の先進地域に上陸する可能性はゼロではない。しかし、仮に先進地域で1人でも感染者が確認されれば、患者の隔離と感染経路の追跡が徹底され、ましてや世界に類を見ない潔癖症社会の日本ならば、手洗いうがいの励行がそれこそ国を挙げて行われるだろう。こうして感染は、ひとまず封じ込められるに違いない。

 感染の拡大を防ぐための、こうした社会的メカニズムが機能していないのがアフリカである。現地で患者の治療にあたる「国境なき医師団」の医師たちからは、流行地域の村々へ入ることを拒否されたとの報告が上がっている。医療関係者は感染防止のために全身を防護服で覆うのだが、その宇宙飛行士のような姿を見た村人の中に「白人たちが悪い病気を持ってきた」と考える人がいるという。筆者も南アフリカの貧困層社会で「エイズは米国が発明した生物兵器」だと力説する人々に出会った経験を持つが、こうした言葉を聞くたびに、いわゆる初等中等教育の欠如、それに起因する衛生概念の欠如といった問題のみならず、植民地支配の時代から長年にわたって形成されてきた外部世界に対する不信の根深さを思わずにはいられない。アフリカでしばしば発生する感染症の流行は、アフリカの社会が抱えている様々な問題を浮き彫りにする。

執筆者プロフィール
白戸圭一
白戸圭一 三井物産戦略研究所国際情報部 中東・アフリカ室主席研究員。京都大学大学院客員准教授。1970年埼玉県生れ。95年立命館大学大学院国際関係研究科修士課程修了。同年毎日新聞社入社。鹿児島支局、福岡総局、外信部を経て、2004年から08年までヨハネスブルク特派員。ワシントン特派員を最後に2014年3月末で退社。著書に『ルポ 資源大陸アフリカ』(東洋経済新報社、日本ジャーナリスト会議賞)、共著に『新生南アフリカと日本』『南アフリカと民主化』(ともに勁草書房)など。
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