クリミアへの旅(5) 併合を巡る「三つどもえの対立」

国末憲人
執筆者:国末憲人 2014年9月12日
エリア: ヨーロッパ ロシア

 クリミア半島の帰属を問うた3月の住民投票で、ロシア併合への賛成が96%を超えたのは、すでにお伝えした通りである。この数値が現実を反映していると思う人はまさかいないだろうが、数字自体は案外、フェイクでも何でもないかもしれない。要するに、併合に反対する人は投票に行かなかったからだ。賛成の人ばかり投票したのだから、このようなパーセンテージになるのも当然だ。

 では、実際にクリミア半島の住人のどれほどがロシア併合に賛成し、どれほどが反対しているのか。これは、難しい問いかけだ。世論調査はないし、したところで市民が本音を言う とは思えない。

 半島内に6月、約1週間滞在して見聞きした限りの感触だが、併合を歓迎する声は確かに少なくない。車にロシア国旗を掲げたり、併合グッズを身につけたりする人は、あちこちに目立つ。ただ、圧倒的に多いかというと、それほどでもないだろう。全体の半分以上に達するとはとても思えず、熱心な併合派は、まあせいぜい2-3割ほどではないか。

 これに対し、熱心な併合反対派、つまりウクライナ残留希望者も、いないわけではない。ただ、併合賛成派には数で及ばない。もちろん、表だって反対するとロシア当局に目を付けられ、身に危険さえ及びかねない。だから、大っぴらに意見を表明できない人が少なくないのも、熱心な併合反対派が 目立たない理由である。そのことも考慮すると、1-2割ぐらいかも知れない。

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執筆者プロフィール
国末憲人
国末憲人 1963年生れ。85年大阪大学卒。87年パリ第2大学新聞研究所を中退し朝日新聞社に入社。富山、徳島、大阪、広島勤務を経て2001-04年パリ支局員。外報部次長の後、07-10年パリ支局長を務め、GLOBE副編集長、本紙論説委員のあと、現在はGLOBE編集長。著書に『自爆テロリストの正体』(新潮新書)、『サルコジ―マーケティングで政治を変えた大統領―』(新潮選書)、『ポピュリズムに蝕まれるフランス』『イラク戦争の深淵』(いずれも草思社)、『ポピュリズム化する世界』(ダイヤモンド社)、共著書に『テロリストの軌跡―モハメド・アタを追う―』(草思社)などがある。
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