「移民論議」から逃げる安倍内閣が残す「大きなツケ」

 外国人労働者が雇用確保を求めてデモに加わることも…… (C)時事
外国人労働者が雇用確保を求めてデモに加わることも…… (C)時事

 「安倍政権は、いわゆる移民政策をとることは考えていません」

 10月1日の衆議院本会議。安倍晋三首相は、次世代の党の平沼赳夫党首の代表質問に答えてこう述べた。アベノミクスで推進しようとしている外国人労働者の受け入れ拡大は、首相に言わせれば、「多様な経験、技術を持った海外の人材に日本で能力を発揮してもらうもの」という位置づけで、決して移民受け入れを考えているわけではないというのである。

 残念ながら、安倍首相のこの答弁は「逃げ」である。日本を世界で最もビジネスがしやすい国にする、グローバルに開かれた国にすると言いながら、移民論議はしないというのだ。もちろん、多くの先進国で移民政策の失敗によって様々な社会問題が引き起こされてきたのは事実だ。だが一方で、日本では生産年齢人口が32年ぶりに8000万人を割り込み、人手不足が顕在化し始めた。労働力の不足は今後ますます顕著になる。だからこそ、移民政策について議論をしなければならない時期なのに、安倍首相は自らそれを封じたのである。

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執筆者プロフィール
磯山友幸(いそやまともゆき) 1962年生れ。早稲田大学政治経済学部卒。87年日本経済新聞社に入社し、大阪証券部、東京証券部、「日経ビジネス」などで記者。その後、チューリヒ支局長、フランクフルト支局長、東京証券部次長、「日経ビジネス」副編集長、編集委員などを務める。現在はフリーの経済ジャーナリスト活動とともに、千葉商科大学教授も務める。著書に『2022年、「働き方」はこうなる』 (PHPビジネス新書)、『国際会計基準戦争 完結編』、『ブランド王国スイスの秘密』(以上、日経BP社)、共著に『株主の反乱』(日本経済新聞社)、『破天荒弁護士クボリ伝』(日経BP社)、編著書に『ビジネス弁護士大全』(日経BP社)、『「理」と「情」の狭間――大塚家具から考えるコーポレートガバナンス』(日経BP社)などがある。
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