経済の頭で考えたこと (71)

「プーチンの思考回路」と「ロシアの未来」

執筆者:田中直毅 2014年12月29日
エリア: ヨーロッパ

 ルーブルの価値の急落でロシア市場への依存度の高い企業の業績が打撃を受けている。例えばビール会社カールスバーグだ。売上高の30%以上をロシア市場が占めていたので、2014年度年初以来50%のルーブル下落で、利益の3分の1は飛んだことになるという。外貨建ての売上高の急落と、ロシアでの生産が輸入原材料高で赤字になるからだ。ロシアからの撤収はない、と声明するのがやっとの状況だ。

 

ルーブル大暴落とロスネフチ救済

 12月15日(月)の夜にロシア中銀が政策金利を6.5%引き上げて17%とした。そのわずか4日前に1%の引き上げを行ったばかりだったので、十分な見通しを欠くナビウリナ中銀総裁に対する批判も高まらざるを得なかった。明けて12月16日(火)、ルーブルは大暴落となり、一時は1ドル=80ルーブルの価格もついた。それでは経済発展省のトップから中銀総裁に転じたナビウリナに本当に責を担わせてよいのかと言えば、実情はもう少し複雑といってよい。プーチン大統領好みのテクノクラートであるナビウリナ女史が与り知らないところでのプーチン人脈の暗躍が、「ルーブル売り」の大波を引き起こしたといえる。それはロシアの国有石油企業ロスネフチの救済手法が明らかとなったからだ。

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執筆者プロフィール
田中直毅(たなかなおき) 国際公共政策研究センター理事長。1945年生れ。国民経済研究協会主任研究員を経て、84年より本格的に評論活動を始める。専門は国際政治・経済。2007年4月から現職。政府審議会委員を多数歴任。著書に『最後の十年 日本経済の構想』(日本経済新聞社)、『マネーが止まった』(講談社)などがある。
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