金正恩「新側近」2人粛清と「命令服従体制」強化の意味

平井久志
執筆者:平井久志 2015年2月13日
エリア: 朝鮮半島

    金正恩(キム・ジョンウン)第1書記は2012年7月に当時の軍のトップであった李英鎬(リ・ヨンホ)総参謀長を粛清し、その後、度重なる軍幹部の異動や階級の昇格、降格を繰り返し、この3年間で金正日(キム・ジョンイル)時代の軍幹部を軍の一線からほぼ退かせることに成功した。

 金正恩第1書記は一昨年12月に朝鮮労働党内で大きな権力を保持していた叔父の張成沢(チャン・ソンテク)党行政部長を粛清、処刑し、その後も党行政部など張成沢氏に連なる幹部たちの粛清作業を続けた。

 金正恩第1書記は軍と党で、自らを脅かす可能性を持った2人の側近を粛清することで唯一的領導体系という名の独裁体制の確立へと向かった。

 昨年12月は金正日総書記の死去3年目となる時であり、金正恩第1書記は「3年服喪」を経て、独り立ちへと向かおうとしている。

 張成沢党行政部長の粛清、処刑の衝撃が大きかっただけに、それから1年余を経て、金正恩時代の指導体制が安定していくかに見えた。

 しかし、昨年末から平壌で起きている事態は、金正恩体制が依然として安定したものではなく、金正恩時代の体制確立がまだ途上にあることを示した。

 金正恩時代に入り、金正恩第1書記が登用し、最側近とみられていた馬園春(マ・ウォンチュン)国防委員会設計局長と辺仁善(ピョン・インソン)総参謀部第1副参謀長兼作戦局長という党と軍の2人の最側近が相次いで粛清されたことが確認された。これは金正日時代からの幹部の粛清や引退とは意味が異なるだけに事態は深刻だ。

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執筆者プロフィール
平井久志
平井久志 ジャーナリスト。1952年香川県生れ。75年早稲田大学法学部卒業、共同通信社に入社。外信部、ソウル支局長、北京特派員、編集委員兼論説委員などを経て2012年3月に定年退社。現在、共同通信客員論説委員。2002年、瀋陽事件報道で新聞協会賞受賞。同年、瀋陽事件や北朝鮮経済改革などの朝鮮問題報道でボーン・上田賞受賞。 著書に『ソウル打令―反日と嫌韓の谷間で―』『日韓子育て戦争―「虹」と「星」が架ける橋―』(共に徳間書店)、『コリア打令―あまりにダイナミックな韓国人の現住所―』(ビジネス社)、『なぜ北朝鮮は孤立するのか 金正日 破局へ向かう「先軍体制」』(新潮選書)『北朝鮮の指導体制と後継 金正日から金正恩へ』(岩波現代文庫)など。
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