ブックハンティング・クラシックス
ブックハンティング・クラシックス(31)

安倍首相が読むには時期尚早? ニクソンの描く「偉大な指導者像」

会田弘継
執筆者:会田弘継 2007年9月号
カテゴリ: 国際 書評
エリア: 北米

『指導者とは』リチャード・ニクソン著/徳岡孝夫訳文藝春秋 1986年刊 リチャード・ニクソンほど複雑で、誤解されているアメリカ大統領はいないだろう。 それは分かっている、と多くの人はいうかもしれない。米中和解を遂げ、泥沼のベトナムから米軍を撤退させた一方で、ウォーターゲート事件のため史上初めて任期半ばで辞任せざるを得なくなった大統領。その栄光と汚辱。すぐれた外交戦略を持ちながら、内政において挫折した。アメリカ現代史を知る人なら、そんなイメージを抱く。 だが、外政家ニクソンだけを評価する人は、次のようなエピソードをどうみるだろうか。 まだニクソンが存命の頃、もう十五年以上前になる。フォーリー元駐日大使が下院議長時代の記者懇談で起きたことだ。何かの拍子にニクソンを腐した記者をたしなめるように、フォーリー議長は言った。「君はニクソンという人を誤解している。ニクソン大統領がいなければ、低所得者に対する食料切符制度は今日ほど完備しなかった。飢餓対策は進まなかった。そういう大統領だ」 念のためだが、ニクソンは共和党、フォーリー議長は民主党で、議長にはニクソンを擁護しなければならない特別の理由はない。「民主党議員がニクソン氏を誉めるのは禁句かもしれないが、事実は事実だ」と付け加えたくらいだ。

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執筆者プロフィール
会田弘継
会田弘継 青山学院大学地球社会共生学部教授、共同通信客員論説委員。1951年生れ。東京外国語大学英米科卒。共同通信ジュネーブ支局長、ワシントン支局長、論説委員長などを歴任。2015年4月より現職。著書に本誌連載をまとめた『追跡・アメリカの思想家たち』(新潮選書)、『戦争を始めるのは誰か』(講談社現代新書)、訳書にフランシス・フクヤマ『アメリカの終わり』(講談社)などがある。
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