国際論壇レビュー

世界が注視する「東日本大震災」と「原発事故」

執筆者:会田弘継 2011年3月16日
エリア: アジア

 突如襲った激震に、東京都心の高層ビル群はまるで船のマストのように揺れ、ギーギーと荒海を進む帆船のような音を立てた。金曜日の昼下がり。高層ビルの中から窓越しに見る青空の中のその光景と音は、シュルレアリズムの世界のようだった。
 やがて、震源地に近い岩手・宮城・福島の沿岸部を中心に、ところによっては高さ10メートルを超える巨大津波が襲う。その速度は5千メートルの深海ではジェット機並みの時速800キロ。水深10メートルでも36キロ。人の足では逃げ切れない。
 襲い来る水の壁に、家は倒れて飲み込まれ、車も木屑のように押し流される。町や村はあっという間に水没し、水が引いた後にはすさまじい破壊の跡と瓦礫の山だけが残った。宮城県南三陸町では住民1万7千人のうち8千人の行方が知れない。各地で、100人、200人、300人と遺体が見つかりだした。
 大震災だ。死者は万単位となろう。しかも、津波防護が万全でなかった福島第一原発で、日本の原発としては初の炉心溶融が起きた。水素爆発で建屋が白煙を上げ、崩壊した。周辺20キロの住民が避難。原発大国日本では未曾有の原発事故だ。しかも、事故は次から次へと4つの原子炉に広がっている。

カテゴリ: 社会
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執筆者プロフィール
会田弘継(あいだひろつぐ) 関西大学客員教授、ジャーナリスト。1951年生まれ。東京外語大英米語科卒。共同通信ジュネーブ支局長、ワシントン支局長、論説委員長などを務め、現在は共同通信客員論税委員、関西大学客員教授。近著に『世界の知性が語る「特別な日本』』 (新潮新書)『破綻するアメリカ』(岩波現代全書)、『トランプ現象とアメリカ保守思想』(左右社)、『増補改訂版 追跡・アメリカの思想家たち』(中公文庫)など。訳書にフランシス・フクヤマ著『政治の衰退』(講談社)など。
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