「想定津波」の数値を改竄した「大飯原発ストレステスト」の嘘八百
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「想定津波」の数値を改竄した「大飯原発ストレステスト」の嘘八百

2012/02/14
科学ジャーナリスト
意見聴取会では継続審議を求める意見も出たが(c)時事

 経済産業省の原子力安全・保安院が再稼働にゴーサインを出そうとしている関西電力・大飯原発3、4号機について、安全性の根拠とされる「ストレステスト」の中身に、数値の改竄と偽造という重大な疑惑がみつかった。津波への安全性が最大の焦点であるストレステストで、全ての推定や計算の基準になる数字、設計段階で想定していた最大の津波高さを1.86メートルから2.85メートルへと、関電は1メートルも水増し・改竄していたのだ。虚偽を承知で、結果を妥当と言い募る保安院も、「合作」の共同責任を強く疑われる。もともとお手盛り満載のストレステストに、でっち上げが加わり、再稼働に向けた茶番劇の非科学的インチキぶりは極まった。
 関電は大飯原発だけでなく、高浜原発1号機のストレステストでも、同様の改竄をしている。設計上の想定津波高さ1.3メートルを2.6メートルへと、2倍も水増ししている。ミスではなく、明らかな意図をもった改竄であることは間違いない。

数値改竄による「安全詐欺」

 想定津波高さは、建設当初の設計思想に基づくもので、後からちょこちょこ変更するようなたぐいの数字ではない。それを大きく変えるということは、基本設計を根底から見直すことだ。関電はいつ、想定津波高さを大幅に変更し、設計思想の大転換を図ったのだろうか。
 福井新聞の昨年11月29日の記事では、福井県内の原発の想定津波高さは、高浜原発は1.3メートル、美浜原発は1.6メートル、大飯原発は1.9メートル、となっている。数字はまるめてあるが、筆者が持っている資料と同じである。
 少なくとも11月末までは、この数値が公式な想定津波高さだった。ところが、その前、同月17日に経産省に提出された大飯4号機のストレステスト評価報告では、1メートルかさ上げした2.85メートルという数値が使われている。明らかな偽造数値だ。
 関電には改竄の理由と、2.85メートルという数値の根拠を、逃げずに示してもらいたい。合わせて、これを妥当な評価結果だとした論拠を、原子力安全・保安院には求めたい。
 事実の外形を見れば、関電は安全性データの虚偽申告で、原子炉等規制法違反の疑いが濃厚で、虚偽を承知で再稼働に動いた保安院には、公衆の安全を損なう行為、原子炉等規制法違反と放射線障害防止法違反が問われる。国家公務員法違反の疑いもある。
 改竄の目的とからくりはとてもわかりやすい。というより子供も騙せないほど単純で見え見えの「安全詐欺」である。

お手盛り計算のストレステスト

 ストレステストは、設計の想定より厳しい条件を課しても、そのシステムの安全が保てるかどうかを確認するものだ。コンピューターシステムや機械プラントなどの、「安全余裕」をチェックするのに使う。
 今回の原発ストレステストで、フクシマ級の津波に耐えられるという結果を出さなければ、原発の再稼働はない。幸い、ストレステストは、徹底したお手盛り計算が成り立つ。使うデータも、計算の基準も、みんな電力会社が自前で用意し、自ら評価する。その評価の妥当性を審査するのは、ストレステスト抜きでも原発を再稼働させようとしていた保安院である。これを多重防護ならぬ多重お手盛りと呼ぶ。
 実際の原発プラントに海水をかけたり、揺らしてみたりするわけではない。揺れの強さがどれほどで、津波の高さがどれほどなら、全電源が失われたり、冷却用の再循環配管が破損したりせず、放射性物質を閉じ込めたまま冷温停止できるかを、机上であれこれ推定して見積もる。数値の員数合わせなら、官僚と電力会社にかなうものはいない。

保安院が指示した「プラス9.5メートル」

 関電が提出したストレステストの評価結果の報告書で、その手口を検証してみよう。
 まず、昨年5月、保安院が電力各社に指示を出す。東京電力・福島第一原発の設計上の想定津波高さは、5.7メートルだったが、それより9.5メートル高い15メートル超の津波に襲われて過酷事故を起こした。再稼働を目指す各原発は、想定津波高さに9.5メートルを足した高さの津波に備えよ、というのが指示内容だ。
 設計上の想定津波高さがそもそも著しく過小ではないかという検証抜きに、一律9.5メートルを足すということに科学性は全くないが、世間の厳しい視線をかわして再稼働にこぎつけるには、この程度のことは考慮せよ、というわけだ。この期待される津波耐性、プラス9.5メートルが、国民をたばかるインチキテストの出発点である。
 大飯4号機は、設計上想定すべき最大地震動=基準地震動Ssを、重力加速度にして700ガル、設計上の想定津波高さは、2.85メートル(本当は1.86メートル)、高浜原発1号機は、基準地震動Ssが550ガル、想定津波高さが2.6メートル(本当は1.3メートル)、とそれぞれ書かれている。
 揺れや津波の高さを変えてシミュレーション(模擬計算)し、最低限の安全性確保、冷温停止が不可能になる破綻ポイントを弾き出している。
 大飯4号機では、地震動については、想定の1.8倍、1260ガルで、核燃料冷却に関係する高電圧開閉装置という機器が破損して冷却機能を失う。津波については、想定高さの4倍、11.4メートルが限界で、それを超すと、交流電源をすべて喪失する可能性が出てくる、としている。
 高浜1号機では、地震動では想定の1.7倍の935ガルで原子炉コントロールセンターにダメージが現れ、津波は想定の4.1倍、10.8メートルで、タービン建屋の補助給水ポンプは壊れて、安全確保の限界に達する。

結論から逆算された数字

 大飯4号機と高浜1号機の評価結果を比べると、奇妙なことに気づく。大飯4号機の津波に対する安全余裕の限界、11.4メートルは、本来の想定津波高さ1.86メートルに、例の9.5メートルを足した値にほぼ一致する。高浜1号機の津波に対する安全余裕の限度、10.8メートルも、本当の想定津波高さ1.3メートルに、9.5メートルをプラスした数値だ。
 運転年数は大飯4号機が19年、高浜1号機が37年で、倍も違う。プラントの安全設計も違うし、出力も違う。その2つの原発の、津波に対する安全余裕が、まるで測って揃えたように、設計上の想定プラス9.5メートルでぴったり一致する。しかも、それは再稼働に向けてお役所が示唆していた「期待される数値」とも、寸分たがわない。
 ストレステストにおいて、関電が最初に安全余裕度=プラス9.5メートルを決め、それに合うように屁理屈を並べていったことはもう明白だろう。数値操作による「やらせ安全余裕」の創作といっていい。想定津波高さを改竄した理由は、設計上の想定と安全余裕の関係を割合で表わすと、大飯では6.1倍、高浜では8.3倍という、とてつもない数字になるからだ。
 設計上想定していた津波より8倍以上も高い津波に耐えるだけの「安全余裕」など、誰も信じはしない。4倍程度なら納得が得られそうだという浅知恵から、プラス9.5メートルの数値、大飯なら11.4、高浜なら10.8を、それぞれ4や4.1で割った値を、設計上の想定津波高さと偽ったのであろう。
 人を騙すにしても、ずいぶんお手軽な「やっつけ仕事」ではないか。原子力ムラの劣化は、騙しのテクニックにまで及んでいるようだ。公然たる安全詐欺には、厳しい罰をもって臨むべきだろう。
 大飯4号機のストレステストに関する関電の「評価結果の概要」にはこう書いてある。「評価の結果、安全上重要な施設・機器等は、設計上の想定を超える事象(地震・津波等)に対する安全裕度を十分に有していることが分かりました」。
 こう書き換えるべきだろう。「福島クラスの津波にも耐える十分な安全余裕があることにして逆算すると、大飯4号機は、建設当初から、設計上の想定津波の6倍も大きな津波に耐えられるよう、最初から作ってあったようです。信じられない話ですが、どうか信じてください」。

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この記事のコメント: 1

1
kunimimasahiro
2012/02/15 14:36
原発事故が起きた場合の危機管理能力にもストレステストを

政府はストレステストの結果、すなわち国内の各原発の地震津波災害に対するハード面での対応の可能性のみで、原発の運転を再開しようとしているようです。
翻って先の東電福島第一原発の事故は、ハード面が満たされていれば起きなかったといえるでしょうか。仮にハード面で想定範囲内であっても、想定外の事故は起きると考えるべきです。
福島第一原発の事故後の対応に関して多くの国民は、菅直人前首相以下首相官邸の危機管理能力の不足、原子力・安全保安院を中心とする経済産業省の原発安全保安対策や国民への通報・広報意識の低さ、原子力安全委員会の機能が国民に十分見えなかったこと、東京電力の本社の対応能力、福島第一原発の所長以下現場のベント遅れに見られる非常時の対応マニュアルの不十分さ、3.11以前の国会における原発安全論議の不十分さなど、人災によって福島第一原発の事故が拡大したことは、これまで広く報道されているところです。
ストレステストによる原発の運転再開には、個々の原発のハード面のみでなく、先に列挙した首相官邸以下危機管理に携わる関係者全員の意識やマニュアルの整備と対応能力の向上などソフト面における実行の可能性を付加することがぜひとも必要であると考えますがいかがでしょうか。
私は、ハードとソフト両面のストレステストが十分機能できて、初めて原発を再稼動すべきだと考えます。

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