原発再稼働と司法(下)「ゼロリスク批判」を嗤う福井地裁決定の「明晰な常識」

「原発は危ないからを止めろと言うなら、毎年5000人もの事故死者を出す、自動車の運転差し止めも、同じように要求すべきじゃないの」――。

 福島原発事故後に高まった、脱原発や卒原発の議論に対して、原発推進・再稼働を唱える人の中から、こんな指摘が近頃、頻繁に繰り出されている。実はこの自動車と原発の比較論は、福島事故の前から、原子力安全神話の「裏バージョン」として使われてきた、原発PRの常套的手法の1つである。

 日本では自動車事故で毎年5000人が亡くなっている。原発に関係する事故の死者として、公式に記録されているのは、核燃料加工施設「JCO」での臨界事故の犠牲者2人だけである。年間5000人の死者と、累積事故死者2人とを比べれば、原発の方が自動車よりはるかに安全ですよと、まずは動かぬ証拠、数字を挙げて「論証」して見せる 

 次に、核アレルギーという病気からヒステリックに反原発を叫ぶ感情論に対して、「この世に絶対安全、ゼロリスクなんて存在しないのですよ」「現代文明は、技術やシステムの持つリスクと利便性を秤にかけて受け入れているのです」などと、ムードに流されやすい国民を、冷笑しつつ上から教え諭す。

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執筆者プロフィール
塩谷喜雄 科学ジャーナリスト。1946年生れ。東北大学理学部卒業後、71年日本経済新聞社入社。科学技術部次長などを経て、97年より論説委員。コラム「春秋」「中外時評」などを担当した。2010年9月退社。
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