経団連会長との罵り合いという小芝居の後、枝野幸男経済産業相は、原発の再稼働と家庭用電気料金の大幅値上げを、2つとも実施する意向を表明した。見事な手のひら返し。地域独占に厳しい視線を送ったのはほんの束の間で、今や電力会社と経産官僚の意に沿って動く「使える大臣」に成長したらしい。理屈に強そうな弁護士出身の枝野大臣だが、再稼働と料金値上げの2つは、論理的に決して並立しないことを、ご存じないようだ。再稼働も値上げも、根拠としている数字は、電力需要のピーク値を2500万kWも過大に見積もり、追加燃料費に至っては3倍以上も水増ししている。政策通の大臣なら、数字を一度チェックして判断すべきではないか。官僚のつくった詐欺的試算を鵜呑みにして、利用者だけにリスク負担と経済負担の両方を強いる図は、悪代官の所業といわれても仕方がない。

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