経済の頭で考えたこと (69)

「アリババ」と「太子党」の「抜き差しならない関係」

執筆者:田中直毅 2014年9月29日
エリア: 北米 アジア
 9月19日、ニューヨーク上場を果たし、記念の鐘を鳴らすアリババの馬会長 (C)EPA=時事
9月19日、ニューヨーク上場を果たし、記念の鐘を鳴らすアリババの馬会長 (C)EPA=時事

 習近平総書記の時代に入り、「中国の夢」や「中華の復興」が掲げられるようになると、中国の外交姿勢には、次第に覇権主義的な色彩がにじみ始めた。その結果、中国の政権構造を決めるものは、国内要因がすべてであるという考え方が中国の内部で強まった。振り返れば、中国が外国の勢力から圧迫されてきたのは、近代史をめぐる19世紀の中葉からのおよそ100年間であって、米国や旧ソ連の軍事力におののいていた時期も、1970年代に入っての米中関係の好転を背景に終了した。中国政府が今日に至るまでキッシンジャー・アソシエイツに少なからざる実質上の顧問料を払い続けているのは、この時点における中国の対外的立場の飛躍的有利化の実現に力を貸したキッシンジャーの役割を、中国側が歴史的なものとみなしているからだ。

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執筆者プロフィール
田中直毅(たなかなおき) 国際公共政策研究センター理事長。1945年生れ。国民経済研究協会主任研究員を経て、84年より本格的に評論活動を始める。専門は国際政治・経済。2007年4月から現職。政府審議会委員を多数歴任。著書に『最後の十年 日本経済の構想』(日本経済新聞社)、『マネーが止まった』(講談社)などがある。
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