テロリストの誕生(8)「クアシ兄弟」事件前の素顔

国末憲人
執筆者:国末憲人 2015年6月3日
エリア: ヨーロッパ 中東

 風刺週刊紙『シャルリー・エブド』編集部を襲撃したクアシ兄弟について、前回から多少時間をさかのぼって、その動静を探ってみたい。

 

「143号室の女」

 クアシ兄弟の弟の方シェリフが2005年1月、自爆テロリスト候補としてイラクに赴こうとしてフランス当局に拘束されたのは、すでに述べた通りである。2006年10月に出所したシェリフは、翌07年10月、知人女性の紹介でモロッコ人女性イザナ・ハミドと出会った。

 イザナは、シトロエンの工場の労働者となった父に連れられてフランスに渡り、ベルギー国境に近いアルデンヌ地方シャルルヴィル=メジエールで育った女性である。幼児教育の教員免許と保健師の資格を得て、2006年に家族の元を離れた。以後、パリ北郊の移民の多い街ジェンヌヴィリエに20平米のワンルームを借り、当地の保育園で保育士として働いていた。

 イザナが育ったのは、普段から礼拝を欠かさない敬虔なイスラム教徒の家庭だった。その影響からだろう。14歳の時から、彼女は髪の毛をスカーフ「ヒジャブ」で覆うようになった。ヒジャブは欧州のイスラム教女性にしばしば見られる装いだが、政教分離と世俗化が進んだフランスではあまり見かけない。まして、教育現場の職員が身に着けることはほとんどない。

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執筆者プロフィール
国末憲人 1963年岡山県生まれ。85年大阪大学卒業。87年パリ第2大学新聞研究所を中退し朝日新聞社に入社。パリ支局長、論説委員を経て、現在はGLOBE編集長、青山学院大学仏文科非常勤講師。著書に『自爆テロリストの正体』『サルコジ』『ミシュラン 三つ星と世界戦略』(いずれも新潮社)、『ポピュリズムに蝕まれるフランス』『イラク戦争の深淵』『巨大「実験国家」EUは生き残れるのか?』(いずれも草思社)、『ユネスコ「無形文化遺産」』(平凡社)、『ポピュリズム化する世界』(プレジデント社)など。
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