中国指導層の新キーワード「不信邪」

野嶋剛
執筆者:野嶋剛 2015年6月18日
エリア: 中国・台湾

 5月末にシンガポールで開かれたアジア安全保障会議(シャングリラ・ダイアログ)で、前日にカーター米国防長官から南シナ海の埋め立ての即時中止を求められたことに応え、中国の孫建国・人民解放軍副総参謀長が「中国和中国军队历来不怕鬼、不信邪、服理不服霸、信理不信邪(中国と中国の軍隊はもとより『不信邪』であり、理に服し、覇業に服さず、利を信じ、『不信邪』である)」と語っているのをテレビで見て、おやっと思った。

「不信邪(bu xin xie)」は「私は迷わない」「揺るがない」という意味で、「蛮勇」「無鉄砲」「怖いものはない」といったニュアンスがある。日本語へ正確に翻訳することが非常に難しい類いの言葉だ。そのまま訳せば「邪なことを信じない」、つまり「迷信は持たない」ということになるが、実際はそういう意味で用いられるわけではなく、「何があっても我が道を行く」「決して揺るがない」のような決意を込める文脈で使われることが多い。

 日本のメディアはこの孫建国発言について、訳しにくいこともあるのか「不信邪」の部分の引用をしていなかったが、いくら解放軍とはいえ、国を代表して世界に向かってコメントする政府高官の発言にしてはいささかそぐわない感があった。

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執筆者プロフィール
野嶋剛
野嶋剛 1968年生れ。ジャーナリスト。上智大学新聞学科卒。大学在学中に香港中文大学に留学。92年朝日新聞社入社後、佐賀支局、中国・アモイ大学留学、西部社会部を経て、シンガポール支局長や台北支局長として中国や台湾、アジア関連の報道に携わる。2016年4月からフリーに。著書に「イラク戦争従軍記」(朝日新聞社)、「ふたつの故宮博物院」(新潮選書)、「謎の名画・清明上河図」(勉誠出版)、「銀輪の巨人ジャイアント」(東洋経済新報社)、「ラスト・バタリオン 蒋介石と日本軍人たち」(講談社)、「認識・TAIWAN・電影 映画で知る台湾」(明石書店)、訳書に「チャイニーズ・ライフ」(明石書店)。
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