テロリストの誕生(11)カラシニコフ銃の数奇な由来

国末憲人
執筆者:国末憲人 2015年7月4日
エリア: ヨーロッパ 中東

 アメディ・クリバリと協力者のアリ=リザ・Pが何度も出かけたベルギー南部シャルルロワは、都市圏人口が50万に達し、同国のフランス語圏で最大の都市である。ベルギーにはブルージュやヘント、アントワープなど古い街並みで知られる観光地が少なくないが、シャルルロワはそうした魅力に乏しい。労働者の街で、かつて炭鉱都市として栄え、その後は鉄鋼やガラス加工、印刷業が盛んになった。

 クリバリは運転免許証を持っておらず、取得したのはテロ直前の昨年12月になってからだった。だから、アリ=リザの協力を得ないと移動できなかったのである。

 2人の行き先は、この街の自動車修理工場だった。そこの主人メタン・Kはクルド系といわれ、同じクルド系のアリ=リザと旧知の仲だったと伝えられる。もっとも、クリバリとアリ=リザは修理工場で本名を名乗らず、「アリ・ケマル」「ムラド」の仮名で通していた。

 この時、クリバリは、妻アヤト・ブメディエンヌ名義で所有していたミニをここに持ち込んで売却しようとした。アヤトはこの車を昨年9月、2万7000ユーロで購入していた。中古車だが、新品に近いものだったという。

 当初の売却価格は1万2000ユーロのはずだったが、メタン側の支払いが遅れるにつれて、クリバリは2万2000ユーロを希望するようになった。クリバリとアリ=リザは少なくとも2度シャルルロワを訪れ、メタン側からも仲間の1人がパリを訪れるなどして、交渉を重ねたという。クリバリが最後にシャルルロワを訪れたのは、今年1月に入ってからだった。

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執筆者プロフィール
国末憲人
国末憲人 1963年生れ。85年大阪大学卒。87年パリ第2大学新聞研究所を中退し朝日新聞社に入社。富山、徳島、大阪、広島勤務を経て2001-04年パリ支局員。外報部次長の後、07-10年パリ支局長を務め、GLOBE副編集長、本紙論説委員のあと、現在はGLOBE編集長。著書に『自爆テロリストの正体』(新潮新書)、『サルコジ―マーケティングで政治を変えた大統領―』(新潮選書)、『ポピュリズムに蝕まれるフランス』『イラク戦争の深淵』(いずれも草思社)、『ポピュリズム化する世界』(ダイヤモンド社)、共著書に『テロリストの軌跡―モハメド・アタを追う―』(草思社)などがある。
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