東芝に“騙された”「新日本監査法人」の責任

磯山友幸
執筆者:磯山友幸 2015年7月24日
カテゴリ: 経済・ビジネス 金融
エリア: 日本

「粉飾決算」問題に大揺れの東芝だが、会社が設置した第三者委員会の報告書が7月21日に公表された。

「経営トップらが、『見かけ上の当期利益の嵩上げ』を行う目的を有していた事実が認められる。そして、幹部職員等の担当者らは、(中略)当該目的の下で、不適切な会計処理を実行し又は継続してきたことが認められる」

 報告書はこう述べ、歴代トップが関与して、組織的に、利益をかさ上げする目的で会計不正を繰り返していたことを認定した。報告書には「利益の嵩上げ」という言葉が60カ所以上にわたって出てくる。明らかな粉飾決算である。

 これを受けて、田中久雄社長を含む歴代トップが役職を辞任。取締役や執行役の多くが退任した。一見、厳しい処分を自らに課すことで、世間の納得を得たいのだろうが、問題がこれで収まるわけではない。東芝は2015年3月期の決算発表を延期したままで、6月末が期限だった有価証券報告書の提出も8月末まで先延ばししている。きちんと決算修正を行い、有価証券報告書を提出できるかどうか。まだまだ予断を許さないのだ。

 報告書では、2008年度から2014年度(第3四半期まで)の利益の修正額は合計1518億円としている。だが、これはあくまでも第三者委員会の調査結果に過ぎない。第三者委員会と言っても会社側が設置したもので、何ら法的な意味があるわけではない。しかも、人選したのは、“主犯”の1人でもある田中前社長で、報告書も田中前社長あてに出された。しかも、報告書が自ら断っているように、強制的な調査権限を持っているわけではない。東芝の経理担当者らの協力の下にできた数字なのだ。厳しい言い方をすれば、これまで不正を働いてきた人たち自らが作ったもの。これですべてだと信じろという方が無理だろう。

執筆者プロフィール
磯山友幸
磯山友幸 1962年生れ。早稲田大学政治経済学部卒。87年日本経済新聞社に入社し、大阪証券部、東京証券部、「日経ビジネス」などで記者。その後、チューリヒ支局長、フランクフルト支局長、東京証券部次長、「日経ビジネス」副編集長、編集委員などを務める。現在はフリーの経済ジャーナリスト。著書に『国際会計基準戦争 完結編』、『ブランド王国スイスの秘密』(以上、日経BP社)、共著に『株主の反乱』(日本経済新聞社)、編著書に『ビジネス弁護士大全』(日経BP社)などがある。
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