テロリストの誕生(14)なぜ「シャルリー・エブド」が狙われたのか?

執筆者:国末憲人 2015年8月1日
タグ: フランス 日本
エリア: ヨーロッパ 中東

 2005年9月、デンマークの日刊紙『ユランズ・ポステン』が預言者ムハンマドの風刺漫画12作品を掲載した。当初は話題にもならなかったが、他の新聞が転載するうちにイスラム過激派の知るところとなり、この年の末から2006年初めにかけて中東やアフリカの国々で抗議運動が起きた。いくつかのデモは暴力的で、デンマークの国旗を焼いたりした。

 これを逆に「報道への圧力」と受け止めた欧州のメディアが、この12作品を再掲載することで『ユランズ・ポステン』紙への連帯意識を表明した。フランスでは、伝統的な大衆日刊紙『フランス・ソワール』が2006年2月1日号で12作品を掲載した。もっ とも、これには内部で批判が出て、編集局長が解任される騒ぎになった。

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執筆者プロフィール
国末憲人(くにすえのりと) 東京大学先端科学技術研究センター特任教授 1963年岡山県生まれ。85年大阪大学卒業。87年パリ第2大学新聞研究所を中退し朝日新聞社に入社。パリ支局長、論説委員、GLOBE編集長、朝日新聞ヨーロッパ総局長などを歴任した。2024年1月より現職。著書に『ロシア・ウクライナ戦争 近景と遠景』(岩波書店)、『ポピュリズム化する世界』(プレジデント社)、『自爆テロリストの正体』『サルコジ』『ミシュラン 三つ星と世界戦略』(いずれも新潮社)、『イラク戦争の深淵』『ポピュリズムに蝕まれるフランス』『巨大「実験国家」EUは生き残れるのか?』(いずれも草思社)、『ユネスコ「無形文化遺産」』(平凡社)、『テロリストの誕生 イスラム過激派テロの虚像と実像』(草思社)など多数。
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