ノーベル平和賞はチュニジアの市民社会団体の連合体「カルテット」に

池内恵
執筆者:池内恵 2015年10月9日
エリア: 中東

 10月9日、ノルウェーのノーベル委員会が、今年のノーベル平和賞を発表した。授賞が決まったのはチュニジアの通称「国民対話カルテット」。

 カルテットとは、チュニジアで建国以来大きな力を持つ「チュニジア労働総同盟(UGTT: Union Générale Tunisienne du Travail)」と、経営者・職人団体の「チュニジア産業貿易手工業同盟(UTICA: Union Tunisienne de l’Industrie, du Commerce et de l’Artisanat)」、人権団体の「チュニジア人権擁護連盟(LTDH: La Ligue Tunisienne pour la Défense des Droits de l’Homme)」、法曹の「チュニジア弁護士会(Ordre National des Avocats de Tunisie)」の4団体の代表による事実上の合議体を指す。立憲議会が対立で行き詰まり、街頭でのデモが民主化移行プロセスを阻害しそうになった時、それぞれの団体が支持政党・関係勢力への影響力を背景に、対話で政治的対立を乗り越えてコンセンサスを形成したことが、憲法制定、組閣・内閣改造、選挙による政権交代といった難関で、軍の介入やデモ隊の実力行使といった制度外の暴力を介在させずに移行期プロセスの制度内で体制変革を進めることを可能にした。非公式の合議体が、民意を汲み上げつつ、公式の議会制度を守ったのである。

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執筆者プロフィール
池内恵
池内恵 東京大学先端科学技術研究センター准教授。1973年生れ。東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程単位取得退学。日本貿易振興機構アジア経済研究所研究員、国際日本文化研究センター准教授を経て、2008年10月より現職。著書に『現代アラブの社会思想』(講談社現代新書、2002年大佛次郎論壇賞)、『イスラーム世界の論じ方』(中央公論新社、2009年サントリー学芸賞)、『イスラーム国の衝撃』(文春新書)、本誌連載をまとめた『中東 危機の震源を読む』などがある。個人ブログ「中東・イスラーム学の風姿花伝」(http://ikeuchisatoshi.com/)。
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