ドネツク人民共和国往還記(上)橋の向こうに戦場がある

国末憲人
執筆者:国末憲人 2015年10月29日
エリア: ヨーロッパ ロシア

 古代・中世の栄枯盛衰は言うに及ばず、「消え去った国家」は現代世界でも珍しくない。歴史の流れに呑み込まれた南ベトナムやソ連、東ドイツから、いったん独立をうたったものの長続きしなかったビアフラ共和国(ナイジェリア)やクライナ・セルビア人共和国(クロアチア)まで、数え切れない。

 ウクライナ東部の「ドネツク人民共和国」もたぶん、そのような国の1つになるだろう。ロシアの支援を当てに独立を宣言したものの、シリア空爆に関心が移った親分から見放され、その存続は風前の灯火だ。

 それだけに、この「国」が存在するうちに訪問したいと考えた。その時の様子を、少し時間が経ってしまったが報告したい。

 トランジットで立ち寄ったキエフで防弾チョッキとヘルメットを積み込み、ウクライナ東部の中心都市ハリコフに着いたのは、今年5月3日の夜だった。

 

誕生した2つの「人民共和国」

赤い点線はドネツク、ルガンスクそれぞれの州境で、「人民共和国」としての領土はもっと狭い

 昨年2月のウクライナの政変「マイダン革命」に危機感を抱いたロシアは事実上の軍事介入に踏み切り、3月にクリミア半島を併合したのに続き、東部のドネツク、ルガンスク両州も内戦状態に陥れた。両州は石炭鉄鋼産業が盛んな地域で、ソ連時代に移り住んだロシア語人口が多い。

この記事は役に立ちましたか?
フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
この記事をSNSにシェアする
執筆者プロフィール
国末憲人
国末憲人 1963年生れ。85年大阪大学卒。87年パリ第2大学新聞研究所を中退し朝日新聞社に入社。富山、徳島、大阪、広島勤務を経て2001-04年パリ支局員。外報部次長の後、07-10年パリ支局長を務め、GLOBE副編集長、本紙論説委員のあと、現在はGLOBE編集長。著書に『自爆テロリストの正体』(新潮新書)、『サルコジ―マーケティングで政治を変えた大統領―』(新潮選書)、『ポピュリズムに蝕まれるフランス』『イラク戦争の深淵』(いずれも草思社)、『ポピュリズム化する世界』(ダイヤモンド社)、共著書に『テロリストの軌跡―モハメド・アタを追う―』(草思社)などがある。
comment:3
icon
  • 記事の閲覧、コメントの投稿には、会員登録が必要になります。
フォーサイトのお申し込み
注目記事ランキング
  • 24時間
  • 1週間
  • f
  • 新着
  • 高評価
  • コメント数順